「金融リテラシー力が低い」ミレニアル世代 中途半端な教育はマイナス効果?

「金融リテラシー力が低い」ミレニアル世代 中途半端な教育はマイナス効果?

先進国のミレニアル世代のリテラシーが中年世代よりも7%低いことが分かった。「金融リテラシー発展国」として知られる米国も例外ではない。その原因として、半分以上の州が経済学を義務教育に取り入れていないこと、パーソナルファイナンスを高校の必須科目にしている州がわずか17しかないことなどが挙げられている。

金融リテラシーの効果については様々な意見がある。「学生時代に金融リテラシー教育を受けていた大人は、そうでない大人よりもクレジットスコア(個人の信用偏差値)が高い」と報告されている反面、「金融リテラシー教育を施すよりも数学を強化した方が効果的」との反論も聞かれる。

米国経済教育協議会「生徒の未来を配慮していない」

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(画像=LightField Studios/ Shutterstock.com)

米国経済教育協議会が2018年2月に発表した報告書によると、経済学の授業を高校に義務付けているのは50州中22州。経済学の試験を義務付けているのは16州。パーソナルファイナンスの授業を義務付けているのは17州だ。

米国経済教育協議会のナン・モリソンCEOは、経済観念を身につける上で必須となる経済学やパーソナルファイナンスを多数の学校が重要視していない事実に、「生徒の未来を配慮していない」と憤慨の色を露わにしている。

またバーモント州のチャンプレイン大学 が2017年に各州の高校卒業生の金融リテラシー度を評価したところ、最も知識や理解力の高い「A」の評価を受けた州はアラバマ州、ミズーリ州、テネシー州、ユタ州、バージニア州のたったの5つ。ワシントン州やカリフォルニア州を含む30%の州が最も知識や理解力の低い「D」や「F」という結果になった。

オハイオ州では経済学の教員訓練に30万ドル投資

学資ローンの総額が過去最高の1.48兆ドルに達した米国において、「大学在学中、卒業後に、どのようにお金の管理をして行くか」という知識を高校生のうちから学んでおくことは、生徒の将来に大きな恩恵をもたらすだろう。学資ローンの返済だけではなく、将来的な住宅ローン、養育費、老後の生活設計など、経済観念が問われる機会にこの先何度も遭遇するはずだ。

2014年に連邦準備制度が実施した調査では、「学生時代に金融リテラシー教育を受けていた大人の方が、クレジットスコアが最高29ポイント高い」ということも報告されている。こうした数々の調査報告を受け、金融リテラシー強化への動きが一部で広がりつつある。例えば米国経済教育協議会の調査で「金融リテラシーの低い州」の4位となったオハイオ州では、2016年に30万ドルを投じ、経済学の教員訓練を実施。「スマート・オハイオ」という名称のこのプログラムを通し、2020年までに7.5万人の生徒が恩恵を受けると期待されている。

金融リテラシー教育で金銭感覚は養えない?「米ミレニアル世代は金融知識が乏しい」

一方、米学術誌「Journal of Human Resources」は、反金融リテラシー教育とも受け取れる興味深い見解を示 している。「数学の方が金融リテラシーよりも効果的」と言うのだ。同誌は「金融リテラシーが生徒の将来的な経済状況に影響を与える証拠はほとんどない」とし、「代わりに数学の授業を強化する方が、金融市場への参加や投資、お金の管理などに役立つ」と主張している。

この説に関しては「全く根拠がない」とは言い切れない。そもそも米国は早い時期から金融リテラシー教育に関心を示して来たにも関わらず、実際のリテラシー能力は他の先進国より低めであることが、S&P グローバル・レーティングの調査 で明らかになっている。

同社が2014年に各国・地域の成人の金融リテラシー度を調査したところ、「複利」「金利」「リスク分散」「インフレ」についての質問に回答する—という簡潔なテストで合格点を得た米国人の割合は57%だった。

世界平均が40%にも満たないと考えると高い方だが、ノルウェー、デンマーク(各71%)、カナダ、イスラエル(各68%)、英国(67%)、ドイツ、オランダ(各66%)などと比べるとはるかに低い。

世代別に比較すると、米国を含むミレニアル世代の正解率が57%だったのに対し、中年層の正解率は63%だった。

つまり金融リテラシー教育に期待されているほどの効果がないか、教育の仕方に問題があるのか、あるいは教育の機会が不足しているのか—ということになる。

最も金融リテラシー度が高いのは先進国の36〜50歳で、 60%以上が何らかの形でリテラシー教育を受けている。最も低いのは発展途上国の65歳以上で、お金の知識があるのは20%以下だった。

中途半端な金融リテラシー教育はマイナス効果?

米国では金融リテラシーを教育カリキュラムに組みこんではいるものの、特に重要な高校教育になると他の科目を重視するのだろうか。そうだとすると中途半端なリテラシー教育が、裏目に出ている可能性も考えられる。

銀行口座を所有する学生は年々増えているが、それと同時にクレジットカードの支払い滞納や長期間にわたる返済も増えている。月々の予算を厳守するのが苦手で、自分のクレジットスコアに無頓着な傾向が強い。貯め方や返し方、増やし方まで知識が及んでいない—といったところだろうか。

米教育Tech企業Ever-Fi とHigherOneが共同で実施したでも、調査に協力した4.2万人の生徒のうち、高校で金融リテラシーを学んだのは34%のみ。6つの質問の正解率は30%程度だった(Investopedia2015年10月5日付記事)。

「金融リテラシー」という概念だけに焦点を置くのではなく、中身をともなう実践的で一貫性のあるアプローチへの改革が求められる。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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Source: 株式投資
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