青年失業率が9.8%の韓国、中小に就職する若者は所得税を5年減免
青年失業率が9.8%の韓国、中小に就職する若者は所得税を5年減免
15歳から29歳の青年失業率は9.8%――。これは韓国統計庁が発表した2018年2月時点のデータだ。韓国の若年失業率の拡大する中で、日本では働き手不足。こうした背景から、日本で就職する韓国人が増えている。2017年に日本で就職した韓国人は2万188人で、2万人を超えたのは初めてだ。韓国政府も中小企業への就職推進と併せて日本への就職を後押しする方針を定めている。
3年後に若者が3000万ウォン以上を貯められる施策
日本国内の韓国人者就業者は年1%前後の微増だったが、2015年から急増、16年は13.6%増え、17年も11.4%の大幅に増えた。
韓国の青年失業率の9.8%は同年前月より2.5ポイント低いが、9級公務員の願書受付が2月に変更になり、受験者が失業者から除外されたことによる一時的なもので、“就職準備者”を含めた実質的な失業率はさらに高いとみられている。
雇用労働部などが設置した雇用委員会は、新たに中小企業に就職する若者への所得支援を柱とする「若者雇用対策」を文在寅(ムン・ジェイン)大統領に報告した。深刻な若者の就職難と中小企業の求人難を同時に緩和する狙いで、2021年までの間に18万~22万人の雇用創出を目標とする。
政府は今後3年か4年間、中小企業に就職する34歳以下の若者を対象に、減税や低利融資、共済制度の拡充などの所得、住居、資産形成を支援する。中小企業に就職する若者は就職後5年間の所得税を全額減免し、控除を拡大して3年後には3000万ウォン以上を貯めることができる支援を行うとしている。すべての支援を合わせると、初任年俸2500万ウォンの大卒就業者の実質所得は年1035万ウォン以上増えると試算する。
若年求職者を新規採用した中小企業に支給する雇用支援金も年間900万ウォンに増額する。若者の実質所得を年間1000万ウォン(約100万円)以上引き上げることで、平均年収2500万ウォンの中小企業就業者の実質所得を大企業の平均年収3800万ウォンに近づけたい考え。34歳以下の人が設立した企業も5年間、法人税と所得税を免除するほか、条件を満たした起業者に資金支援も行う計画だ。
労働市場にさらに参入する若者たち
政府は青年就職難の要因をベビーブーマーの子世代である「エコーブーマー」が本格的に就職市場に参入したためと分析している。
今後4年間で通常より39万人多いエコーブーマーが雇用市場に流入する。対策を取らなければ青年失業者は14万人増えると企画財政部は予測する。青年失業解決の最大の節目と考え、2021年まで青年失業解消のための予算と政策を集中させる方針だ。
韓国は2度のベビーブームを体験している。1回目は朝鮮戦戦争後の1955年から63年で、経済成長期の68年から77年に2回目のベビーブームを迎えたが、その子世代である91年から96年生まれの第2次エコーブーマーと呼ばれる世代の労働市場参入が始まったのだ。
2018年には前年比で11万人、以降2021年まで毎年5万人前後の増加となる。2022年からは、49年まで減少が続き、2028年には前年度と比べて18万人減少する。政府は2022年からは構造的に青年失業問題が緩和されると想定している。
海外就職も支援
雇用委員会は、中小企業への若者の就職やシェアリングエコノミー、ヘルスケアサービスといった新しいサービス分野への就職と起業機会を増やす方針とあわせ、2022年までに日本やASEAN諸国など1万8000人の若者の海外就業を支援する「海外地域専門家養成方策」を発表した。日本をはじめとする外国企業への就業や、海外に進出している韓国企業への就業も支援する。
韓国はITに強い人材が豊富で、日本語と英語を話せる人が多い。日本人同士のような「あうんの呼吸」は通用しないが、エコーブーマー世代は変化を素直に受け入れる素地がある。2012年頃から韓国に進出した企業など、日本で就職して実績を積んだ韓国人駐在員が目立つようになってきており、韓国をはじめ海外人材の候補となる期待もある。
日本以上に少子高齢化の進展が著しい韓国は、将来的には人材不足に陥る可能性は否定できないが、目下の4年間が大きな課題として政府にのしかかっている。(佐々木和義、韓国在住CFP)
Source: 株式投資