遺言信託のメリット・デメリットとは?
遺言信託のメリット・デメリットとは?
相続を考える時に、「財産を円滑に承継したい」「相続人同士で争ってほしくない」と誰もが願うところでしょう。そのために欠かせないのは遺言書ですが、遺言書を作るには、財産の内容を整理して評価額を計算するなどの手間がかかり、専門的な知識も必要です。そこで、スムーズな相続を実現するために利用したいのが「遺言信託」です。遺言信託の概要やメリット・デメリット、実際の流れ、金融機関のサービスについて解説します。
遺言信託とは、遺言書の作成から遺言の執行までをサポートしてくれるサービス
遺言信託とは、銀行・信託銀行など金融機関が提供するサービスの一種で、「遺言書の作成」から「遺言書の保管」、そして「遺言の執行」まで、相続や遺言に関わる手続きを幅広くサポートしてくれるものです。
一般社団法人信託協会の「信託統計便覧」によれば、金融機関における遺言信託の取扱件数は、2017年9月末時点で約11万6,000件となっており、10年前と比べて倍増しています。終活ブームや相続税法の改正により、相続に対する関心が高まってきたことが背景にあるのかもしれません。
遺言信託のメリットとしては、まず、遺言書作成の手間を軽減できることが挙げられます。遺言書を作成するには、保有財産の内容を整理したり、遺産分割の方法を検討したりといった事前準備が必要で、さらに作成にあたっては専門的な知識も求められます。遺言信託を利用すれば、それらの工程を金融機関がサポートしてくれます。
また、遺言書の内容をいつでも修正できるのもメリットです。遺言書を作成してから、その本人が亡くなり遺言が執行されるまでにはタイムラグがあります。その間も、資産の内容や相続人の状況は変化することがあるため、遺言書を修正する必要が出てくる可能性もあります。遺言信託を利用していれば、遺言書にある財産状況や相続人の状況が変化した場合にも必要な手続きを行ってもらえます。
そして遺言者が亡くなった時には、金融機関が遺言執行者となって相続に関する手続きをサポートしてくれるので、スムーズな相続手続きで「争族」を回避できることが大きなメリットと言えます。
遺言信託のデメリットはコストがかかること
遺言信託にはデメリットもあります。まず、費用がかかること。手数料の体系は、金融機関によって、受けるサービスの内容によって異なります。基本的には申込時(遺言書の作成時)、保管中、遺言書の変更時、遺言執行時にそれぞれ費用がかかることになります。
なかでも遺言執行にかかる手数料は、「課税対象額の○%」などと計算方法を決めており、財産の評価額によって手数料は変わってきます。利用を検討する場合は手数料がどのくらいになるのか事前に確認しておくことが大切です。
また、子の認知や相続人の地位を奪う「廃除」など相続人の身分に関する遺言を希望する場合や、推定相続人との間に遺産分割に関するトラブルが発生している場合などは、遺言信託の利用を受け付けてもらえない可能性があります。
遺言書の作成から遺言の執行までの流れは?
遺言信託を利用する際にはまず、金融機関と相談して、どのように財産を相続するのか、遺言書の内容を決めます。場合によっては金融機関が提携する弁護士・税理士などの専門家と、より細かく相談する必要もあるでしょう。
そして、相談の内容を元に金融機関が遺言書を作成します。遺言書の方式にはいくつかありますが、より信頼性の高い「公正証書遺言」を作成するのが一般的です。作った遺言書は、金融機関に保管されることになります。そして、その後も財産や親族関係の変更がないか金融機関が定期的に照会してくれます。
遺言者が亡くなって相続が発生すると、金融機関は遺言執行者となり、遺言内容を実現するために、遺産の管理や不動産等の名義変更、遺産の分配などさまざまな手続きを行います。それらの手続きがすべて完了すると、遺言信託業務は終了となります。
銀行に遺言信託を任せるという安心感
遺言に関する業務は弁護士・税理士に依頼することもできますが、銀行等の金融機関に依頼するメリットは何でしょうか。
一つには、高い公共性や信頼性を持つ金融機関に依頼することで、安心感が得られるということです。また金融機関によっては、遺言信託だけでなく、生前贈与や相続手続きの代行、資産運用コンサルティングなども併せて提供しています。お金に関する幅広い相談に乗ってもらえる頼もしさは、金融機関ならではと言えるでしょう。
煩雑な手続きをしたくない、多忙で遺言書を作成できない、相続のことで家族に心配をかけたくないなど、相続に不安や悩みがある方は遺言信託の利用を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:プレミアサロン)
Source: 株式投資