アラフォーで結婚、子供を授かると「老後破産」のリスクが高まる? 晩婚化が招く「家計の三重苦」とは
アラフォーで結婚、子供を授かると「老後破産」のリスクが高まる? 晩婚化が招く「家計の三重苦」とは
さて、いきなりですが問題です。
「人生の三大費用」とは、何を指すのでしょうか?
答えは、住宅費、教育費、老後の生活費です。即答できた人はどれくらいいるでしょうか? これは金融広報中央委員会が、18歳以上の個人のお金や金融に関する知識・行動の特色を把握するために実施した「金融リテラシー調査(2016年度)」の一つなのですが、約半数が間違っていたといいます。
「人生の三大費用」については、私たちFP仲間でも情報交換や議論を度々交わしているのですが、近年の晩婚化や長寿化等がこの三大費用による「三重苦」を招き、ひいては「老後破産」のリスクを高めていると考えられます。今回は、人生の三大費用と「家計の三重苦」についてお届けしましょう。
「三大費用」ってどれくらい必要なの?
まず、「人生の三大費用」とは具体的にいくらぐらいなのでしょうか。住宅費、教育費、老後の生活費の順番に見ていきましょう。
公益財団法人の生命保険文化センターによると「住宅の平均取得価格」は土地付注文住宅で3900万円、建売住宅は3300万円、マンションは4200万円とされています。
教育資金は公立か私立か、理系か文系かで大きく変動します。私はFPとして教育資金について相談を受けることもあるのですが、その際に参考までに文部科学省の『平成26年度子供の学費調査』及び日本政策金融公庫の『教育費不安の実態調査結果(平成28年度)』をベースにした試算を提示しています。具体的には「小学校から大学まで私立の学校へ通うケース」で約2000万円、「高校までが公立で大学が文系のケース」で約1500万円です。
老後資金についても巷では様々な金額が言われていますが、少なくとも夫婦2人で3000万円は用意しておきたい、と私は考えています。
たとえば、 子供が1人の家庭でマンションのローンを組み、高校までが公立で文系の大学に進学したケースで試算すると、
4200万円+1500万円+3000万円=約8700万円
上記の通りとなります。子供が2人になると1億円を超える計算です。さらに上記費用の他に生活費である食費、光熱費、通信費、保険料などもかかります。
晩婚化が「家計の三重苦」を招く?
昔はこの三大費用が発生するタイミングが「ほど良く」ズレているケースが多く、結果として家計への負担も分散されていました。それは女性が24歳を過ぎると「売れ残り」などと言われていた時代のことです。
たとえば、1950年の女性の平均初婚年齢は23歳、男性は25.9歳でしたが、2016年の女性の平均初婚年齢は29歳、男性は30.7歳と晩婚化が進んでいます。そして、こうした晩婚化が人生の三大費用の「三重苦」を招く要因の一つとなっているのです。
では、具体的に晩婚化は家計にどのような影響を及ぼすのでしょうか。次のパートで「ナミヘイさん」と「カツオさん」のケースを比較してみましょう。
ナミヘイさんは23歳で結婚し「三大費用」を分散
昔は子育てと住宅ローンは、同じくらいにスタートしていました。
ナミヘイさんの例を紹介しましょう。ナミヘイさんは23歳で結婚してその年に第1子が誕生、26歳で住宅を取得して30年ローンを組みました。
もっとも教育費がかかるのは、子供が18歳になる頃ですが、ナミヘイさんは41歳でバリバリ働いている時期です。この年齢は収入も安定して会社の中でも中堅に位置するようになっているケースが多いのではないでしょうか。住宅ローンは56歳まで続くので、家計的にはもっとも厳しい時期といえますが、それでも子供が大学を卒業するまでの4年間さえ乗り切れば、その後はぐっと楽になります。
子供が大学を卒業する頃、ナミヘイさんは45歳です。その後、定年退職を迎えるまでの15年を老後資金の準備にあてることが可能となります。
たとえば、毎月8万円ずつ老後資金を蓄えれば、15年間で1440万円の貯蓄ができるわけです(8万円×12か月×15年=1440万円)。これに退職金を合わせれば、目標の3000万円に近づけることができるのではないでしょうか。もちろん、様々な金融商品で運用することでもっと増やすことも可能です。逆に足りない場合は、退職後も少し働くことによって老後資金を補充する必要があるでしょう。
カツオさんは「三重苦」で老後資金が貯められない
ところが、昨今は晩婚化が進んでおり、40歳近くになっても独身というケースも珍しくありません。
たとえば、カツオさんは39歳で結婚。結婚を期にマイホームを取得し、30年の住宅ローンを組み、翌年に第1子を授かりました。
子供が大学に進学する頃、カツオさんは58歳になります。ちなみに、国税庁が公表している年齢階層別の給与推移を見ると、およそ50代前半をピークに所得が下降する傾向が認められます。カツオさんは58歳から62歳の間に、最も教育費がかかる厳しい時期を迎えます。
カツオさんが60歳で定年を迎え再雇用されたとしても、給料が半減することも考えられます。そうなると奨学金や教育ローンを借りたり、退職金を取り崩す事態になるかもしれません。
住宅ローンは、30年ローンですから69歳まで続きます。このような環境では、とても老後資金を準備する余裕などありません。子供が大学を卒業する頃のカツオさんは62歳です。退職金はまだ残っていますがかなり減っているのではないでしょうか。ここから何とか頑張って貯蓄をするしかありません。場合によっては65歳以降も働く必要があるでしょう。
長生きをリスクにしてはならない
いかがでしょうか? 39歳で結婚したカツオさんは教育資金、住宅資金、老後資金の「三重苦」に巻き込まれてしまったのです。決して冗談ではなく結婚する「39歳(サンジュウク)」までに将来を見据えたマネープランを実践していれば状況は大きく好転できたのかもしれません。
今回は、人生の三大費用と「家計の三重苦」についてお届けしました。これからの時代、ますます晩婚化が進み、平均寿命がどんどん延びることが予想されます。長生きをリスクにしてはいけません。「人生の三大費用」についてしっかりと理解し、なるべく早い時期から支出が重ならない工夫はもちろん、たとえ重なったとしても余裕をもって対応できる「備え」が必要なのです。
長尾 義弘 (ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『お金に困らなくなる黄金の法則』『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。 http://neo.my.coocan.jp/nagao/
Source: 株式投資