コインチェックたった36億の買収劇。中島聡が感じた不可解な点
コインチェックたった36億の買収劇。中島聡が感じた不可解な点
1月に世間の耳目を集めた「コインチェック騒動」ですが、4月6日、コインチェック社はマネックスグループの完全子会社になることを発表し、再び世間を驚かせました。この記者会見を見た、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは、たった36億円の買収劇について「安すぎる」と不可解さを感じたことについて記しています。
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上のリンクは、580億円相当の仮想通貨NEM流出を起こしたコインチェックが、36億円でマネックスの100%子会社になると発表した時の記者会見の様子です。
コインチェックは、NEMの流出により消費者の信頼を裏切っただけでなく、その後の金融庁による立ち入り調査の結果、顧客の資産と会社の資産を明確に分割していなかったなどの問題点が可視化し、このままでは事業者として運営を続けるのが難しい状況に追い込まれていたのだと思います。
コインチェックは、NEM流出被害者への補償として、460億円を現金として返却することを発表し、「そんなに儲かっていたのか!」と多くの人を驚かせました。世界でもトップ10に入る取引量と、上手に設計された(異常なまでに高い)手数料により、莫大な利益をあげていたことは確実で、その会社がわずか36億円で買収されるというのは、それほど数字に強い人でなくても異常だということは分かります。
記者会見のやりとりを見ると、「事業が継続できないかもしれない」というリスクを考える買い手(マネックス)と、「事業が継続さえ出来れば、莫大な利益を生み出せる」と考える売り手(コインチェックの株主)との間で、売買価格に大きな開きがあり、それをアーンアウトという仕組みで解決したそうです。
アーンアウトとは、この手のハイリスクハイリターンの買収に使われる手法で、すぐに支払われる買収金額は低く抑えつつ、もし事業継続が可能で、かつ、利益を上げることが出来れば、その利益に応じたお金が売り手に支払われる、という仕組みです。
具体的な数字は公開されていませんが、私が買い手であれば「1年以内に金融庁からお墨付きをもらうことが出来、かつ、ひと月の利益が10億円を超えた場合、その超えた分の30%を買収後3年間支払う。ただし、顧客からの訴訟などが継続している場合は、その50%を補償費用として保持し、弁護士費用、賠償金などを差し引いた後に支払う」などの条件を提示して交渉しただろうと思います。
一つだけ不可解なのは、コインチェックが内部保留していたはずの利益や、会社自身が所有していた各種暗号通貨の含み益の存在です。460億円の現金を補償金として支払うことが出来たコインチェックが、さらに数百億の利益を内部保留していた可能性は十分にあります。それまで含めて36億円で買収できたのであれば、とんでもなく安い買い物です。
これも私であれば、内部保留分や暗号通貨の含み益は、顧客からの訴訟への対応のための予備費として保持しておき、それが解決した後に、アーンアウトと同じく、既存の株主に払い戻すという形がすっきりとして良いように思えます。
Source: 株式投資