保険の満期には何をすればいいのか 満期保険金が受け取れる保険は?税はどうする?
保険の満期には何をすればいいのか 満期保険金が受け取れる保険は?税はどうする?
保険の満期は、保険期間の終了を意味すると同時に、契約の更新や見直しについて検討するタイミングでもある。また保険の種類によっては、満期保険金を受け取ることができる。ここでは、保険の満期とは何なのか、満期保険金とはどういうもので、これを受け取った場合の税務手続きはどうすればよいのかといった点について詳しく解説する。
保険の満期とは
保険の「満期」は、保険期間終了時を意味する言葉である。例えば、2018年3月1日に保険期間10年の定期保険に加入した場合、10年後である2028年3月1日が満期日となるのだ。
そして保険の種類によっては、満期時に保険金を受け取ることができる。これを「満期保険金」と呼び、払い込まれた保険料の中から一定額を積み立てることにより支払われる。生命保険会社によっては預貯金よりも予定利率が高い商品を販売している場合があり、貯蓄目的で満期保険金が支払われる保険に加入する人も少なくない。
●満期保険金と解約返戻金の違い
満期保険金と混同されがちな解約返戻金だが、両者は似て非なるものだ。上述のように満期保険金は、保険期間の終了に伴い支払われるものである。また、支払われる保険金の額は、契約時に定められている。これに対して解約返戻金は、保険期間の「途中」で保険を解約することによって支払われるものである。その額は、保険料の払込み期間が長くなればなるほど多くなる。
満期保険金を受け取れる保険の種類
満期保険金が受け取れる保険には、以下のようなものがある。
●養老保険 高度障害状態もしくは死亡した場合に保険金が給付
養老保険は、保険期間内に高度障害状態もしくは死亡した場合に保険金が給付されるものである。満期時に生存していた場合は、所定の満期保険金が支払われる。一般的には死亡・高度障害保険金=満期保険金となっており、生きていても死んでいても一定額の保険金を受け取ることができるのが、この保険最大の特徴といえるだろう。
そのため養老保険は、老後への備えを目的として加入する人が多い。満期と定年のタイミングを合わせることによって、定年を迎えると同時に満期保険金を受け取ることができるし、万一の場合は高度障害・死亡保険金が支払われるため、遺族の生活についてもしっかり備えられるからだ。
●貯蓄保険 中には医療特約を付加できるものも
貯蓄保険は、保険期間終了時に満期保険金が給付されるほか、高度障害状態もしくは死亡した場合にも契約期間に応じた保険金が支払われる。具体的に支払われる保険金は商品により異なり、中には医療特約を付加できるものもある。
●生存給付金付定期保険 一定期間ごとに生存給付金を受け取ることも
生存給付金付定期保険は、保険期間中に高度障害状態もしくは死亡した場合に、高度障害・死亡保険金が給付されるものである。また保険期間中に生存していれば、一定期間ごとに生存給付金を受け取ることができる。例えば「契約期間15年、3年ごとに生存給付金5万円」という条件の保険に加入した場合、保険期間中に生存していることを条件として、3年ごとに5万円が給付されるのだ。
またこの種の保険では、生存給付金を受け取らず据え置くことも可能である。据え置いた生存給付金は生命保険会社所定の利率により、積み立てられていく。
●学資保険(こども保険) 商品によっては祝金のみなので注意を
学資保険は、契約者を父母(祖父母の場合もあり)、被保険者を子どもとして加入する保険である。子どもの入学時期や年齢に応じて祝金が給付され、満期時にも満期保険金が支払われる。ただし、商品によっては祝金のみが支給され満期保険金が支払われない場合もあるため、加入時には注意が必要だ。
また学資保険には育英資金を付加できる場合があり、保険期間中に契約者(父母や祖父母)が高度障害状態もしくは死亡した場合、約定の育英資金を受け取ることができる。
満期保険金を受け取った場合の税務処理
満期保険金を受け取った場合、注意しなければならないのがその税務処理である。というのも満期保険金は、保険料負担者や保険金受取人が誰なのかによって税務上の取り扱いが変わるのだ。
●保険料負担者と満期保険金受取人が同一の場合
保険料負担者と満期保険金受取人が同一である場合、受け取った満期保険金は「一時所得」として扱われ、所得税と住民税の課税対象になる。そして一時所得の課税金額は、以下の計算式によって算出される。
一時所得の課税金額=(満期保険金+配当金−払込保険料総額−特別控除50万円)×1/2
例えば、保険期間20年、月額保険料1万9800円、配当金なし、満期保険金500万円、という条件の保険に加入していると仮定する。この場合、満期保険金を受け取った場合の課税一時所得金額は、「(500万円−475万2000円−50万)×1/2」により算出される-12万6000円となり、税金を課せられることはない。
また満期保険金は、「年金」として受け取ることもできる。受け取った満期保険金は、「雑所得」に分類される。この場合も所得税・住民税の対象となることに変わりはないが、課税金額は「1年間に受け取った年金額−その受領金額に対応する払込保険料」により算出される。
●保険料負担者と満期保険金受取人が異なる場合
保険料負担者と満期保険金受取人が異なる場合、受け取った満期保険金は贈与税の対象になる。基礎控除額110万円を差し引いた後の贈与額に応じた贈与税率は、以下の通りだ。
・200万円以下……税率10%
・300万円以下……税率15%、基礎控除額10万円
・400万円以下……税率20%。基礎控除額25万円
・600万円以下……税率30%、基礎控除額65万円
・1000万円以下……税率40%、基礎控除額125万円
・1500万円以下……税率45%、基礎控除額175万円
・3000万円以下……税率50%、基礎控除額250万円
・3000万円以上……税率55%、基礎控除額400万円
上であげた例と同じ、保険期間20年、月額保険料1万9800円、配当金なし、満期保険金500万円、という条件でシミュレーションしてみる。保険料負担者が父で満期保険金受取人が子である場合、「500万円−基礎控除額110万円」により算出される390万円が、贈与税の課税対象となる。
同じ契約条件でも満期保険金受取人が変わるだけで、課税対象額にここまでの差が生じるのだ。
●源泉分離課税になる場合
わが国の税制下において所得は、(1)利子所得(2)配当所得(3)不動産所得(4)事業所得(5)給与所得(6)譲渡所得(7)一時所得(8)雑所得(9)退職所得(10)山林所得、の10種類に区分される。そしてこれらのうち(1)〜(8)の所得については、その合計金額に対して税金が課せられる。これを、「総合課税制度」という。
ただし一部の所得については、他の所得と分離した上で一定税率の所得税が課せられ、これを支払う者が源泉徴収する場合がある。これを、「源泉分離課税制度」という。そして満期保険金の中には、この制度の対象となるものがある。保険料負担者と満期保険金受取人の異同に関係なく、「金融類似商品」に該当するものの満期保険金については源泉分離課税になるのだ。
具体的には、5年以内に満期を迎える一時払養老保険などがこれに該当する。また保険期間が5年超の場合であっても、一時払養老保険や一時払個人年金保険、一時払変額保険、一時払変額個人年金を「5年以内」に解約した場合は同様の取り扱いとなる。
満期保険金が源泉分離課税制度の対象となる場合、課せられる税率は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合計した20.315%となる。納めるべき税金については生命保険会社が差し引いた上で満期保険金を給付するため、これを受け取った者が確定申告をする必要はない。
満期まで保険を続けるべきか?見直すべきか?
満期がある保険に加入している場合、見直しを検討していても「満期保険金を受け取るまではもったいないから……」という理由で、そのままにしてしまうことが少なくない。しかし契約内容や加入期間によっては、満期を待たず見直した方がいいケースがある。
●保険料の支払いが難しい場合
経済事情の変化などによって保険料の支払いを継続するのが難しい場合、満期を待たずに保険の見直しをしてみてもよいだろう。
例えば生存給付金付定期保険に関していうと、定期的に生存給付金を受け取ることができる分、保険料が割高に設定されている。また満期後に契約を更新することは可能だが、更新時の年齢で保険料が計算されるため、これまで以上の保険料を支払わなければならない。こういった場合は、掛け捨てタイプの死亡保障保険への乗り換えを検討してみてはいかがだろうか。近年は割安な保険料で大きい額の保障が受けられる収入保障保険もあるため、子育て世代の方は検討対象に加えてみるといいだろう。
ただし養老保険のように更新がないもので、あと数か月で満期を迎えるような保険については保険料を支払い、満期保険金を受け取ったほうが得な場合がある。
●元本割れをしている短い場合
変額保険の満期保険金は、その額が生命保険会社による資産運用の実績に左右される。そのため加入しているのが変額保険である場合、満期保険金が払込保険料を下回ってしまう可能性があるのだ。
運用実績については生命保険会社から1年に1度、書面で通知される。その内容から元本割れのリスクが高いと判断した場合は、保険の見直しを検討してみるのも一つの選択肢であろう。
●解約返戻金が支払保険料を上回っている場合
養老保険や生存給付金付定期保険など、満期保険金があるタイプの保険は、その多くが保険料の払込み期間に応じて解約返戻金が増えていく。商品によっては、満期よりも前に解約保険料の額が支払保険料とほぼ同じくらいになるか、これを上回ることもあるのだ。
こういった場合、満期を待つことなく保険の見直しをしてもよいだろう。解約してもそれなりの額の解約返戻金を受け取れるため、大きな損がないからだ。
税務上の取り扱いが大きく変わることも
養老保険や定期保険など、満期保険金があるタイプの保険については、見直しの対象としない人が少なくない。しかし、契約内容や加入期間によっては、見直したほうがお得なケースもある。またこの種の保険は、満期保険金の受取人や金融商品類似性の有無によって、税務上の取り扱いが大きく変わってくる。養老保険や定期保険に加入する場合は「お金がたまるから」「老後への備えが欲しいから」という理由だけでなく、こういった点についても理解しておいたほうがいいだろう。
曽我部三代
保険業界に強いファイナンシャルプランナー。富裕層の顧客を多く抱え、税金対策・相続対策を視野に入れたプランニングを行う。2013年より、金融関連記事のライターとしても活動中。
Source: ZUU online
Source: 株式投資