グローバル(G)テールリスクを意識

グローバル(G)テールリスクを意識

シンカー:政治的なテールリスクを見極めようとマーケットは動いているようだ。アメリカではトランプ大統領の鉄鋼関税導入の発表などで、今後、貿易戦争に発展する可能性などが意識され、ゴルディロックス相場の先行き不透明感が強まっている。欧州では、ドイツ、イタリアの総選挙の結果次第で、今後ユーロ圏の政策へ大きな影響が出る可能性が意識されている。日本では、黒田総裁の相殺再任の所信聴取での発言が早期の緩和終了観測が強めた。このような政策不透明感はグローバルな金融マーケットでのボラティリティの増加につながっているようだ。しかし、テールリスクが実現せず、グローバルに安心感が戻ってくると、ボラティリティは低下し、為替・株式市場には従来のトレンドが復活する可能性が高まるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

最新のSGグローバル・レポートと要約

ECB(3/5): ECBプレビュー: フォワードガイダンス変更は時期尚早

3月8日の次回ECB理事会では、ECBの政策意図が完全に明らかになることはないと見込まれる。最近になって(ECBと外部の)コミュニケーションが揺れた問題は、初回利上げが遠いという見通しを維持することに(ECBが)しっかりと焦点を当て、大部分が解決された。市場がより神経質になっているため、次回の理事会は、APP(資産買入れプログラム)に関するガイダンスの変更をECBが考え始めるには早すぎるとみられる。弊社も、6月にはQE(量的緩和)再延長や、必要ならば金利ガイダンスの強化が議論されると見込んでいる(弊社は、今年10月から12月まで月150億ユーロのペースでAPPが継続され、2019年6月には初回利上げが実施されると予測している)。また従来と同様、政策正常化プロセスは危険なほどゆっくり進むとみている(力強い経済状況が提供している機会を逃すリスクがあるほか、将来のマクロ経済安定に取組むという金融政策の役割を弱める)。とはいえ、ドイツでの賃金上昇加速(と夏の間のベース効果)に助けられ、6月理事会では今年中のQE終了に向けて最後の一押しを始めるだろう。なお新しいECBスタッフ景気見通しは、今年のGDP成長率と総合インフレ率はわずかに上方修正されるがコアインフレ率は据え置かれる、という形になる可能性がある。

外国債券(3/5): 政治的なテールリスクを見極める

3月4日のイタリア総選挙とドイツの連立協議をめぐる社会民主党(SPD)の党員投票結果は、週明けの金融市場を揺さぶる可能性がある。テールリスクが現実のものとなれば、安全性を求めて「質への逃避」が起きることは間違いなく、ユーロ圏周縁国の債券がアンダーパフォームするだろう。セントラルバンカーは金融緩和策を徐々に解除するという目標を追求している。次の大きな試練は、欧州中央銀行(ECB)が金融政策を決める3月8日の理事会である。我々は、ユーロ圏の債券利回りに上昇バイアスがかかる一方、米国金利はそれほど上昇ペースが加速する心配はないという見方を維持している。

米国経済(3/2):コアPCE物価指数…「年率」の力強さはあまり参考にならない

米国の1月PCE物価指数の上昇率は、「コア」は前月比では0.3%だったが、前年同月比は12月と同じ1.5%だった。「総合」は前月比0.4%、前年同月比は12月と同じく1.7%だったが、四捨五入すると1.6%となる水準(1.65%未満)に非常に近かった。いずれにせよ、コアPCE物価指数の年率換算上昇率がインフレ再加速を示していると一部で指摘されているが、弊社は依然としてそれを疑問視している。「コアPCE物価上昇率(前年同月比)は年央の1.7%-1.8%がピーク、年後半に減速する」という見方を弊社は継続する。

ドイツ政治(3/1): SPDが大連立に同意しなければ ?

ドイツ社会民主党(SPD)が今週行う投票では、再度の大連立政権への参加が小差で支持されると、弊社は見込んでいる(結果は日曜日=4日に発表)。こうした結果を見込んだ理由は、連立協定がSPDにとって比較的有利なこと、SPDの党首交代、そして世論調査でSPDの支持率低下が続いていることだ。だが不確実性は依然として高い。もし大連立が実現しない場合は、短期的な少数政権になると弊社は見込んでいるが、再選挙となる可能性も高い。(CDU/CSUと緑の党、自由民主党=FDPによる)「ジャマイカ連合」形成に向けた交渉が再開される可能性もあるが、それには再度の総選挙を行った後になるだろう。

イタリア政治(2/28):総選挙と、考えられる市場への影響

イタリアでは3月4日に総選挙が実施された。今回は、主要政党・連合のマニュフェストを基にした考えられる結果に照らし、弊社が前回に行った分析結果 (参照) をアップデートする。また弊社ストラテジストが、様々な選挙結果による、株式、クレジット、為替の各市場で発生する可能性があるインパクトを評価する。

クロス・アセット(2/27):(さらなる)米ドル安がアジアに及ぼすインパクト

弊社は今回、Q&A形式で「ドルがさらに下落した場合、何が発生するか」とアジアの経済、金融政策、為替、株式市場へのインプリケーションを考える。これは以下2点の理由で重要だ。

(1) 2018年に入って、ドル安に関するニュースフローが世界的に加速している。国別にみて最も加速しているのはインド、韓国、中国だ。この3カ国は、ドル安に敏感となっている可能性があると考えられる。

(2) 2016年12月のピーク時からのドルの下落幅(13%)は、過去のサイクルに比べると小さい。例えば 2002年から2008年には25%下落していた。

経済: 景気やインフレに対するインパクトは控えめと予測される。特に、貿易加重ベースでの為替レート調整が非常に小幅になると見込まれるためだ。

政策対応: 金融政策のインパクトは小さいとみられるが、一部の中央銀行は介入を通じて「風に逆らう」かも知れない。日本は特殊な例で、円が大幅に上昇すればイールドカーブ・コントロール(YCC)からの脱却が遅れる可能性がある。

為替: アジア通貨の対ドル為替レート上昇幅は、 KRW(韓国ウオン)とTWD(台湾ドル)が最大に、INR(インド・ルピー)とIDR(インドネシア・ルピア)が最小、人民元はその間のどこかになると見込まれる。円は、日銀が現行の金融政策を持続するならば小幅上昇になるだろう。しかし、出口戦略の実施が近いと市場が考えるなら、大幅な円高となる可能性がある。

金利: 通常は、世界的に景気見通しが良い時にドルが力強さを増す。その場合、イールドカーブには上昇・スティープ化バイアスがかかる。また円の市場金利は、金融政策に変化がなければ、足元の水準で動かない可能性がある。

株式: 日本では、円高が、(5年間にわたる強気市場のけん引役であった)企業収益拡大の強い足かせになるだろう。日本を除くアジアでは、さらなるドル安によって、投資流入の増加や収益改善を通じて株価が下支えされると見込まれる。

ニュースフロー・ウォッチ(2/27): 米先行指標は景気過熱懸念が誇張されていることを示唆

弊社独自のニュースフロー指数は、景気モメンタム、金融・財政政策、インフレ、リスクなど様々な関連する市場テーマを分析するための「ビッグ・データ」アプローチである。これらの指数は通常、金融市場に最大2~3ヵ月先行する。

米景気先行指標が下降に転じる:1月第1週以降、米国のエコノミック・サプライズ指数(CESI)は急低下しており、ISM製造業景気指数の改善にも歯止めがかかっている。弊社独自の米国経済ニュースフロー指数(ECNI)は昨年10月により慎重に転じた(下図)。これらはいずれも成長減速を示唆している。本稿のEDITORIALでは、これらの指標のリードタイムについて検証している。

メッセージは市場心理と相反:米国の先行指標がより慎重に転じるなかでも、世界経済成長の改善と財政による景気刺激策を反映して成長率のコンセンサス予想は上方修正された。これは米経済の過熱懸念につながっており、インフレ率の回復を後押しし、FRBにプレッシャーを与えている(弊社は2018年に3回の利上げを予想)。

景気過熱懸念は誇張されていると思われる:米減税は2018年に一時的に成長を刺激するだろうが、新たな政策イニシアチブはさほど野心的ではない。金融緩和の終焉も重しとなり始めよう。弊社は過熱を懸念するよりも、成長減速の影響が十分に考慮されていないと考えている。

米国株のショートを継続、しかし米国債をオーバーウェイト:米10年国債利回り2.9%はかなり魅力的であり、米国株よりもプロテクティブだと思われる。たとえS&P 500がピークから10%下落しても、米国株への関心を復活させるには不十分だった一方、予想利益はピーク水準にあり、さらに加速する余地は限られている。弊社は日本株(オーバーウェイト)を選好し、欧州株(ニュートラル)に対しては選択的なアプローチを取っている。原油価格は当面のピークを打ったとみられる。

過去の翻訳レポートを弊社のリサーチサイト( https://insight.sgmarkets.com/#/page/japanese )に掲載しています。

また、原文の英語レポートもご覧いただけます。

アクセス権をまだお持ちでないお客様は、担当営業にお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司


Source: 株式投資
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