お金持ちが「好き嫌い」よりも最優先させるコトとは?
お金持ちが「好き嫌い」よりも最優先させるコトとは?
(本記事は、加谷珪一氏の著書『あなたの財布に奇跡が起こるお金の習慣』かんき出版、2014年12月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
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「世代の違い」は無理に乗り越えなくてよい
実業家のSさんは、こうした人間関係の構築がとても上手だ。Sさんは良好な人間関係をうまく自分のビジネスに応用して大きな資産を築いてきた。
お金持ちになった人の多くが、年長者との人間関係の構築を得意としている。世の中では年長者がキーマンになっていることが多く、こうした人にうまく食い込むことができれば、いろいろな意味で道が開けてくるからである。Sさんも、もちろんその例外ではない。
だがSさんの優れたところは、自分より若い世代とのネットワークも豊富という点である。
変化が早い現代社会において、これは非常に強い武器になる。
Sさんは、相手が若いからといって、決してエラそうに話をしない。一方で、若い人に媚びて無理やり話を合わせようともしない。
年長者の中には、初対面でも相手が年下だと分かると、いきなり「○○君」などと話を始める人がいる。上下関係のみで話が決まる世界ではそれでもよいかもしれないが、そういった人物を相手に心を開く人は少ない。
一方、若い人に溶け込もうと、無理に話を合わせるのも逆効果である。世代間のギャップは確実に存在しており、本質的にこれを埋めることはできないからである。
世代が異なる相手とうまく付き合うためには、世代の違いが存在していることを前提に、対等な関係を構築するコツが必要である。
Sさんは、若い世代の人に対しては、最初は質問という形で話に入っていく。そして、ちょうどよい頃合いで、かつ、お説教にならない範囲で、自身の経験値を提供していく。
Sさんは、以前、ネット上の情報を解析するアルゴリズムを開発している学生と知り合ったことがある。Sさんはその後、いくつかの質問を丁寧なメールで行い、末尾には「何か私にできることがあったら、遠慮なく言ってください」というメッセージを添えていた。
起業に対して少し興味を持っていたその学生は、Sさんにいくつか質問を返してきた。そのうち、Sさんと学生は時折メールで情報交換をする仲になった。やがて相手は大学を卒業し、現在はネット系のIT企業に勤めている。Sさんにとって彼は、非常に有益な情報源となっている。
他人を「どのような行動をする人なのか」だけで見る
世代が異なる人との人間関係は、同世代の人間関係とはまったく異なる。若い人と年配者では絶対に埋めることができない世代間の隔絶があるからだ。
世代が異なる人と上手に付き合うためには、お互いが提供できる機能を相互に認識するという合理的な思考が必要となる。
年配者が持つ経験値は、どうがんばっても若い世代では得ることができないものである。
この部分をうまく若い人に認識させることができれば、世代が異なっていても、良好なコミュニケーションを維持することが可能となる。
だが、その経験値は若い人から見て価値のあるものでなければ意味がない。価値がないと判断されてしまえば、それはただの経験値の押し売り(説教)となってしまう。世代間のコミュニケーションとは非常にシビアなものなのだ。
ではこうした合理的な人間関係はどのようにして構築すればよいのだろうか?もっとも重要なことは、相手を好き嫌いだけで判断しないことである。
人はどうしても、相手を好き嫌いだけで判断しがちである。学生時代まではそれでもよいかもしれないが、社会人になるとそうはいかない。さらにもう一歩進んで、お金持ちになるための人間関係ということになると、完全に御法度である。
自分にとってメリットのある人間と良好な関係を構築するには、好き嫌いよりも、相手はどういう機能を持った人間なのかを優先させる必要があるのだ。
先ほどのSさんの他人に対する理解は非常にドライである。
例えば、Sさんは、彼の部下であるBさんに対して、「特定の仕事に対しては高い集中力を見せる人」と評している。ここにはBさんに対する特段の感情はない。だが人によってはBさんについて「仕事を選り好みする、身勝手な人」という印象を持っている。筆者はBさんも知っているが、はっきり言って、かなり自己中心的な人である。
だがSさんは、Bさんを決して批判しない。Bさんがなぜ自己中心的で仕事を選り好みするのかについては、興味すら持っていない。
というよりも、Sさんの他人に対する理解は、どのような行動を取る人なのかという一点に絞られていて、相手の行動の背景や、それに対するSさん自身の感情を、あえて無視しているのだ。
Sさんは、相手の持つ機能に合わせて、仕事の指示の仕方や付き合い方を変えている。Bさんに対してはBさんの性格をふまえた上で、仕事を指示しており、Bさんに対しては、それ以上は決して望まないのである。
Sさんはこれができているので、人をうまくまとめることができ、事業を成功に導くことができた。
世代が異なる人との付き合い方にも、この発想は応用されている。異なる世代と付き合うと、基本的なカルチャーの違いで、イラッとする経験は誰にでもある。だがSさんは、まず相手を機能として見るクセがついているので、それで拒絶反応を起こすことはないのだ。
Sさんのような人物は今後、さらに有利になってくる可能性が高い。それは、社会がよりグローバル化していくからである。
グローバル化というと、すぐに英語ができる、できないという話になりがちだが、そうではない。グローバル化の本当の影響はもっと本質的なものである。
グローバル化が進むと、人種や宗教、性別、価値観などがバラバラな人が集まって仕事をする機会が増えてくる。こうした事態から生じる軋轢を乗り越え、価値を生み出すことが本当の意味でのグローバルな対応なのである。言語はそのひとつの象徴にすぎないのだ。
加谷珪一(かや・けいいち)
東北大学卒業後、ビジネス系出版社に記者として入社。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。現在は、ビジネス、経済、マネー、IT、政治など、多方面の分野で執筆活動を行う一方、億単位の資産を運用する個人投資家でもある。著書に『お金持ちの教科書』『大金持ちの教科書』(以上、CCCメディアハウス)がある。
Source: 株式投資