イーサリアムASICとETH価格の関係性を考察する
イーサリアムASICとETH価格の関係性を考察する
どうも墨汁(@bokujyuumai)です。
ビットコインASICで世界の70%以上のシェアを誇る中国のBitmainはASIC耐性のあるイーサリアムの専用ASIC Antminer E3を発売。当初は一人1台で中国国内では購入できないにも関わらず1時間絶たずに売り切れました。
本稿ではこのイーサリアムASICの影響とイーサリアムの今後について考察を行いました。
イーサリアムはハードフォークするのか?
イーサリアムの改善提案を行うEIPにASICでの中央集権化問題について対策を行うハードフォークを行うかどうかのRIP-958 についてイーサリアムコアデベロッパー会議36で議論されました。結論からいうとVitalik氏は「どのようにしてASIC対策を行うかは検討がつかない」とし、否定しました。
ハードフォークを行う際、エコシステム全体の十分なコンセンサス(合意)と技術的安定性が必要になります。現時点では180Mh/sの800Wという公式情報しかでておらず対応を行うことができないためASIC対策にハードフォークという漠然とした内容ではなにもできないのは当然の結果となります。
Antminer E3の脅威
Antminer E3の販売について公式発表を受け、マイナー達に激震が走りました。事前の報道では220MH/sで2000-3000ドルとのことでしたが、実際は180MH/sの800ドルという脅威の価格でした。ではマイナーでない方向けに順を追って説明を行います。
GPUマイニングリグ
通常イーサリアムをマイニングするには並列演算の得意なGPUを使用します。CPUでもマイニングはできましたが、ハッシュレートの大幅な上昇から現在ではテストネットコインをマイニングする以外の目的ではつかわれなくなっています。
GPUマイニングはビットコインでもできましたが、ASICの登場から現在はCPUと同様に電気を無駄に消費するだけとなっており、行う人はいないまたはごく少数となっています。
GPUリグとは通常のパソコンを構成するのと同じでGPUを多く積んでいるというのが特徴です。
構成は
名前 | 価格 | 個数 | 合計 | 備考 |
---|---|---|---|---|
CPU | 4,500 | 1 | 4,500 | セレロン |
M/B | 20,000 | 1 | 20,000 | - |
RAM | 4,000 | 1 | 4,000 | - |
HDD or SSD | 3,000 | 1 | 3,000 | - |
PSU | 15,000 | 2 | 30,000 | 750W |
ライザー | 800 | 8 | 6,400 | - |
GPU | 34,000 | 8 | 272,000 | - |
合計 | 22 | 339,900 | - |
となり同じハッシュレートを出すのに最低でも30万円以上のコストがかかることがわかります。
Antminer E3
実際の同じ性能のGPUを構成するのに約4分の1の価格でリリースしたAntminer E3は一人1台から売れ行きの良さからか5台までに変更されました。この追加分も更に3日ほどで売り切れたことから、Bitmainは需要の高さを知り、バッチ2(第二段発送で性能は同じ)をリリース。すると価格は1,800ドルに値上げされていました。
これらの3段階の行動から、Bitmainはイーサリアムネットワークが対策を講じる可能性やCasperへの移行による限られたマイニングリミットからASICを新規追加しても需要がないと考えていたことがわかります。800ドルでバッチ1に買ったマイナーは運がとてもよかったということがわかります。
イーサリアムASICを再々販売し完売したBitmainは需要の高さからバッチ2を販売。発送次期は変わらないのに価格なんと2倍以上の1800ドル
800ドルという価格が破格の値段だったことがよくわかります#Ethereum #イーサリアム #仮想通貨 #ブロックチェーン $ETH #フィンテック #AntminerE3 #Bitmain pic.twitter.com/lgaAbbdB7Z— 墨汁うまい(BlockchainUmai) (@bokujyuumai) 2018年4月10日
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ASICとイーサリアム価格の関係
イーサリアムはマイナーのインセンティブにより下落が停止し、BTC建てでは順調な回復を見せており、5万円も目の前となっています。BitmainはASICを開発後にテストと開発費回収のためにマイニングを行っていると言われています。現にハッシュレートは価格が大幅に下がっているにも関わらず260Th/sまで上昇を続け維持しています。
ですがこのままETH価格が上がらない場合にはマイニング収益性から購入者が一部の電気代の安い国しか対象にならず、ましてや中国国内では販売しないという点から現在のASICを販売は分が悪いでしょう。収益性がある程度回復するまで待つほどCasper移行のリミットが近づくためBitmainとしては早い段階でリリースして開発費だけでも回収したいと考え、現に800ドルで最低限の利益確保と様子見を行いました。
(*国内でマイニングは違法ではないが、取引所は厳しい規制により閉鎖されている)
現在Bitmainがマイニング報酬を売却などに使っていたPoloniexでは異常な買い板のサポートが見られ、直近では合計1000ETHの買い板も見られ綺麗なソーサーボトムが見られETHが買われていることがわかります。
出典:Crypto Trader
Bitmainとしてはイーサリアム価格を上げることによってASIC販売対象国を増やすことができ、今までのマイニング報酬を同時に売却することで大幅な利益を出すことができます。Bitmainは企業であり、”ビジネス“ でASICを開発販売しているのでETH価格をサポートまたは意図的な買い上げを行っているという可能性が考えられるでしょう。
結論と考察
ETHの買い支えや意図的な買い上げはBitmainに関わらずマイナーも行うインセンティブがあります。Proof of Workの特性上価格は下がりづらくなりますが、マイニング収益を上げるには価格が上昇する必要があるからです。これは大きな資産力を持つマイナーほど可能となり、収益こそがマイナーのインセンティブであるため自然なことでしょう。
Source: CoinChoice
Source: 株式投資