メンバーのモチベーションを見極める「Y理論」とは?
メンバーのモチベーションを見極める「Y理論」とは?
(本記事は、嶋津良智氏の著書『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』ぱる出版、2018年3月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
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思い通りにいかないのが仕事
仕事は、思い通りに行かないことの連続です。そこから逃げずに立ち向かうためにも、モチベーションを高めることが必要です。
困難の難易度が高ければ高いほど、強力な馬力のあるモチベーションエンジンが必要になります。車でも急坂になるほど馬力のあるエンジンが必要になりますよね。それと一緒で、難しい仕事であるほど、その人のモチベーションエンジンもより強く、より多くなる必要があります。小さいエンジンがひとつだけでは、困難を乗り越えられません。
メンバーからは様々な要望が上がってきますが、基本的には前向きに検討してあげることが大切。メンバーの一人から「ノマドワーカーのように、あちこちのカフェや喫茶店を行き来しながら働いた方が、仕事がしやすい」と要望がありました。もしかしたら彼は、許可されるはずはないと思いつつ言ったかもしれませんが、私は許可しました。モチベーションが上がって、それが生産性につながるなら、チームとして何も問題はないからです。
「人間は仕事を楽しむ性質を持つ」を立証したY理論
マサチューセッツ工科大学教授のダグラス・マグレガーという方が提唱した「Y理論」をご存知でしょうか?「基本的に人間は仕事を楽しむ性質を持ち、報酬や罰則などの外的動機づけがなくても、承認や自己実現などの内的欲求によって自発的に働き、しかるべき責任を取ろうとする存在である」というものです。わかりやすく言えば、「人間は仕事嫌いなのではなく、管理者次第で積極的に仕事に取り組んで創意工夫をこらし、組織の目的に積極的に貢献することができる」ということ。
私は、このY理論は正しいと実感できます。メンバーが何をモチベーションとして、仕事を頑張っているか把握できれば、あとはエンジンをかけてあげるだけです。
「あいつにだけは負けたくない」という「負けず嫌いエンジン」
「これをやり遂げたら自分へのご褒美に○○を買おう」という「購買エンジン」
「社会の役に立ちたい」という「貢献エンジン」
「早く昇進したい」「給料あげたい」などの「向上心エンジン」
「家族の幸せな顔がみたい」という「幸福追求エンジン」
「これをなしとげたら自由が手に入る」という「自由追及エンジン」
思い浮かぶものをざっと列記してみましたが、メンバーは自分が何のためなら一生懸命になれるのか自覚すれば、自ら積極的に働いてくれます。
ここで注意があります。一番やってはいけないのが、「これをやれば、こいつもやる気を出すだろ」と勝手に自分のモノサシで、相手のエンジンを決めつけることです。「幸福追求エンジン」を持っている人に、「給料を上げれば文句ないだろ」と昇給させたところで、逆効果です。
車を手で押そうとしても、車は動きません。エンジンをかけてはじめて車は動きます。それは人も同じこと。リーダーはメンバーを無理やり動かすのではなく、自ら走り出してくれるようエンジンを探り当てましょう。
嶋津良智(しまづ・よしのり)
一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事。30000人以上のリーダー育成に携わった、リーダー育成の第一人者。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。24歳で最年少営業部長に抜擢。就任3ヶ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。28歳で独立・起業し、代表取締役に就任。2004年、52億の会社まで育て株式上場(IPO)を果たす。2005年『リーダーズアカデミー』を設立。業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界14都市でビジネスセミナーを開催。2013年、一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。
Source: 株式投資