わたらせ渓谷鐵道を復活させた“あるもの”を活かすアプローチ

わたらせ渓谷鐵道を復活させた“あるもの”を活かすアプローチ

鉄道路線の廃止が相次ぐ現代。群馬の足尾銅山近くを走るわたらせ渓谷鐵道の経営は、存続の危ぶまれた地方鉄道が見事に復活した事例として注目を浴びています。名物社長の采配で次々と個性的なプロデュースを行い、重要な観光資源である鉄道を通して地域の活性化をリードしました。沿線住民の大切な足を守るために『目の前にあるものをいかに活かしていくのか』。快走するわたらせ渓谷鐵道の魅力をご紹介します。

廃線寸前だった路線がなぜメディアで注目?

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(写真=PIXTA)

わたらせ渓谷鐵道は足尾銅山で知られる群馬県みどり市を走る、豊かな自然に包まれた路線です。長年、地域住民の足として愛されてきましたが、2000年代に入ると乗客数が急激に落ち込み、廃線寸前とまでささやかれていました。

廃線は時間の問題かと思われていた頃、オリジナリティあふれるユニークな取り組みによってわたらせ渓谷鐵道は大きくメディアに取り上げられ、全国的に注目されることとなります。

地方の疲弊した赤字路線の鉄道会社が奇跡の復活を遂げた背景には、わたらせ渓谷鐵道にしかない魅力を徹底して形に変え続ける名物社長の存在がありました。

足尾銅山とゆかりの深いわたらせ渓谷鐵道の歴史

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(写真=PIXTA)

日本有数の銅の産出地だった足尾銅山。わたらせ渓谷鐵道は、産出した銅や人馬、物資の運搬用として1912年に建設されました。やがて国鉄足尾線となり、1973年の閉山後は赤字路線のため一度は廃止が決定されましたが、沿線住民の存続活動によってJR誕生まで生き残ります。その後、第三セクターによる観光鉄道としての経営が始まりました。

沿線には渓谷美を誇る渡良瀬渓谷や足尾銅山など観光資源が点在しています。1998年から運行が始まった観光列車「トロッコわたらせ渓谷号」の人気も後押しして、関東を代表する観光鉄道の一つとなりました。

しかし、沿線人口の減少や観光客数の低迷によって再び廃線の話が持ち上がります。そんな厳しい状況にあった2009年に社長に就任し、地元の大切な公共交通機関を救うために立ち上がった人物こそ、元群馬県庁職員の樺澤豊氏です。

名物社長樺澤氏のスゴ腕経営

樺澤社長は就任直後から独自の再建策を強力に推し進めました。まず、これまで本数の少なかったイベント列車を増発させ観光客をターゲットに宣伝をスタートします。

マスコットキャラクター「わっしー」を広めるため新しくグッズを開発。鉄道のレールに使われる滑り止めの砂を入れて縁起を担いだ「わ鐵のお守り」は観光客に大人気となりました。

さらに、「地産地消」をコンセプトにしたオリジナル駅弁の開発へと乗り出します。百貨店の駅弁催事には自ら宣伝マンとして売場に立ちました。いまやわたらせ渓谷鐵道の名物となった「やまと豚弁当」にいたっては、観光案内マップの包装紙やおまけのオリジナル手ぬぐいなどのアイデアが評価され、2011年度に「グッドデザインぐんま」のパッケージ部門で大賞に選ばれました。

また、トロッコわたらせ渓谷号がビューポイントに差し掛かるとスピードを落としたり、列車の天井にイルミネーションを付けてトンネルを通過中に光らせたりなど、乗客を楽しませるためのアイデアを実現し、さらに観光客を増やすことに注力しました。

社長のこだわり「あるもの探し」

現在、観光鉄道として成功への道を歩んでいるわたらせ渓谷鐵道ですが、社長就任直後は社内改革を一から始める必要がありました。どうせ廃線になって会社がなくなると思っていた社員たちを挨拶の仕方から再教育し、自ら行動する社員へと意識を変えていきます。また、わたらせ渓谷鐵道でなければできない「こだわり」や「ストーリー性」を大切にしながら、いまある手札をいかに活かすかを模索し続けました。リーダーが目の前にある材料だけで必死にアレンジしていく姿を続けたことこそ、社員に慕われ、観光客や沿線住民を呼び戻す大きな推進力になりました。

今後もわたらせ渓谷鐵道に期待高まる

地方鉄道は沿線地域にとって魅力ある観光資源の目玉です。樺澤社長をはじめ会社や住民たちの鉄道を愛する思いが、全国から乗客の集まる人気の観光鉄道に変えたといえるでしょう。樺澤社長の率いるわたらせ渓谷鐵道が今後どのようなアイデアでその魅力を磨いていくのか、期待が高まります。(提供:JIMOTOZINE

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Source: 株式投資
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