中国、ネット通販大手によるパパママストアの囲い込み激化

中国、ネット通販大手によるパパママストアの囲い込み激化

中国ではネット通販大手による夫妻店(パパママストア)の囲い込みが進んでいる。天猫小店(アリババ)、京東便利店(京東/JD)で、京東は、1日1000店を開店させると宣言した。第3位の蘇寧易購は、囲い込みには加わらず、自社物件方式で「蘇寧小店」を出店していく。

中国のパパママストアが急速に変化しつつあるのは間違いない。商業メディア「億邦動力」が、これら最新情報を伝えた。中国商業の底辺を支えてきたパパママストアは、どこへ向かうのだろうか。

パパママストアの利幅は薄く

中国経済,小売業界
(画像=PIXTA ※画像はイメージです。)

中国では全土には600万を超える零細商店があると見られている。大部分はパパママストアである。その70%は3~6線級の地方都市に位置している。店主の80%は45歳以上で、通常はスマホやインターネットには精通していない。経営は過去10年、概ね安定していたとはいえ、利幅は薄く、平均営業時間は12時間を超えている。収入増の見通しは立たない。彼らには何より、情報過疎に置かれている。相談相手が存在せず、何をどうしてよいのかわからない。

一方、小売りの15%を占め中国小売業界の主役に躍り出たネット通販大手は、そろって「無界零售」「新零售」などの名を冠したO2O融合の新小売業を標ぼうし始めた。2017年のことである。

ネット通販の戦略は、オフライン小売業との提携、新業態実体店舗の開発だ。オフライン小売業との提携は規模の大小を問わない。小との提携を目指すプラットフォームとして、通販大手が提出したのが「天猫小店」「京東便利店」である。将来を思い悩む小商店主にとって、渡りに船の面は確かであった。時代の必然だった。

アリババ、京東の加盟条件

アリババの「天猫小店」と京東の「京東便利店」の加盟条件を見ていこう(1元=17.06日本円)。

●天猫小店 加盟費1万元など必要

50平米以上の店を持っていること、月平均仕入額1万元以上が必要。加盟費1万元、技術費を年間3999元徴収する。店舗改装費に3~6万元必要だが、この費用は第三者の見積もりによる。イートインスペースとPOSシステムを導入する。

2線級~6線級都市がターゲット。河南、広東などまず9省でドミナントエリアを作り、配送効率を追求する。仕入れは天猫プラットフォームからだが、他社からの仕入れもOK。ビッグデータによる経営指導あり。

●京東便利店 補償金など必要も明確な加入条件・数値目標なし?

加盟条件に具体的な数値指標はない。文書条件に符合することと、保証金1万~10万元、改装費3万~5万元が必要。全国展開。仕入れは京東経由で、配送は京東物流が担当する。他社からの仕入れOK。ビッグデータによる経営指導あり。

京東は大ざっぱと言えるだろう。ネット上の評価を見ると、天猫小店に有利である。

京東の1000店計画

京東の劉強東CEOは、2018年の目標として、年末には、京東便利店を毎日1000店を開店させると表明した。京東には1日5万件の開店申請を処理する能力があるという。全国展開でアリババに先んじようとしているのだろう。そして5年後の目標は100万店だ。

これをネット通販3位の蘇寧易購は、無謀な計画と強く批判している。同社の「蘇寧小店」オフライン店舗は現在400店舗である。今後毎月50~200店舗の出店速度を保ち、3年後には従来型の蘇寧店舗と合わせ1万5000店舗とする計画だ。将来加盟店を募る方式は排除しないとしながら、当面は自社物件でいく。その蘇寧が強調し、暗に京東を批判しているのは以下の点である。

(1) 店舗ロケーションの精度。蘇寧は、万達、恒大、碧桂園など不動産大手と組んで好物件を確保する。
(2) 家電量販店首位、ネット通販3位の総合力によって、蘇寧のO2O融合モデルは、どこよりも洗練されている。
(3) 蘇寧は食品の比率を高くせず日用品主力である。毎日必要な生鮮をすべてオンラインで注文するのは不可能という判断による。

ネット通販大手3社は、それぞれのO2O戦略を実行に移している。極めてアグレッシブだ。大手以外にも「店小桔」などのベンチャーもパパママストアの組織化に挑んでいる。どこが勝利を収めるかはまだ予想できない。中国地方都市の小売業が活性化することだけは間違いないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)


Source: 株式投資
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