老後の生活費の実態は?自分と日本社会の現実を見据えよう
老後の生活費の実態は?自分と日本社会の現実を見据えよう
「老後は不安だけれど、遠い将来のことだから今はまだ考えたくない」という人も多いでしょう。しかし、老後の経済的な不安は数値として把握できますし、いち早く行動した人だけが解消できるものです。ここでは、老後の生活費の実態を統計資料から明らかにするとともに、「どれくらい貯蓄すればよいのか」について解説します。
老後破産!?年金だけでは足りない老後の生活費
少子高齢化による社会保障費の増大によって、将来自分が高齢者になったときの年金制度や健康保険などに対し、人々の不安の目が向けられています。実際、社会保障費は今後も右肩上がりであることが予想されています。厚生労働省によると、2017年の社会保障給付費は120兆円に達しました。
そして、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年には150兆円近くに達するという予測があります。GDPの4分の1近くが社会保障給付費という状況で、日本の財政を大きく圧迫し続けるのは間違いなさそうです。
仮に年金の支給額が減額されたり、支給時期が後ろ倒しになったりすると、老後の生活費に大きな打撃を与える結果となります。老後のお金事情について、漠然とした不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。2015年には、『老後破産』『下流老人』というショッキングなタイトルの書籍が話題を呼んでいます。
ひとり暮らし高齢者の生活費の実態
老後の経済的な不安を解決するためには、まず実態を数字として把握することです。なぜなら、実情を具体的に知れば、「どれぐらいお金を用意すればよいのか」について解決策が浮かび上がってくるからです。そこで、まずはひとり暮らし高齢者の生活費の実態を知りましょう。厚生労働省の「家計調査報告」の2016年度版によれば、高齢単身無職世帯の平均的な社会保障給付は毎月11万1,375円、そのうち可処分所得は10万7,648円となっています。
一方の支出額は毎月14万3,959円であるため、不足額は3万6,311円です。これは毎年約44万円、30年間で1,300万円を超える不足額になります。しかし、あくまでも平均的な計算であり、実際は厚生年金や有価証券などの配当金、不動産の家賃収入などで多くの収入を得ている人もいるでしょう。一方、「国民年金しかもらっていない」「年金が全くもらえないという人」は、不足額の幅が毎月5万円や10万円になることも予想されます。
そう考えると、2,000万円はないと厳しい老後が待っていると考えたほうがよいでしょう。自分のもらえる年金額は、現役の間に支払う金額と制度(国民年金/厚生年金)である程度決まってきます。自分が何にいくら払っているのかは、問い合わせれば分かりますから、将来の年金支給額をつかんでおくとよいでしょう。特に、ひとり暮らしで親族や友人・知人のサポートが期待できない人にとってはきわめて重要です。
夫婦2人暮らし生活費の実態
同じように、「家計調査年報」2016年度版から高齢者夫婦の2人暮らしにおける生活費の実態を見ていきましょう。高齢夫婦無職世帯の社会保障給付は平均19万3,051円で、そのうち可処分所得は18万2,980円です。一方の消費支出額は23万7,691円にのぼっているため、毎月の不足額は5万4,711円となっています。
不足額を年換算すると、約66万円です。これを30年間続けるとすると、実に2,000万円近くが自分の資産からの持ち出しでやりくりする金額となるわけです。厚生年金に入っていないとすると、給付金の額が10万円以下であることも十分考えられます。また、政府の財政悪化による給付額削減もありえない話ではありません。
こうした事情を考えると、仮に夫婦とも死ぬまで大きな介護・医療費負担がないという想定でも、3,000万円近くは用意しておいたほうがよいことになります。なかなか貯金できていない現役世代にとっては、ハードルの高い額です。
仕事・貯金・資産運用……老後をリアルに見つめて対策を
現在閲覧できる統計データを見ることで、ひとり暮らしだと約2,000万円、夫婦2人暮らしだと約3,000万円は貯めないといけないことが分かりました。あとは、その額を「どのように貯めるか」について考えるだけです。ひとり暮らしを続けるつもりであれば、目標額までにいくら不足しているか把握し、定年までに毎年平均どれくらいのペースで貯蓄すればよいかシミュレーションするとよいでしょう。2,000万円を20年で貯めるとするなら、1年間で100万円、つまり毎月8万~9万円を貯金に回せば目標達成です。
家族を持つ場合、考慮すべき条件がもう少し複雑になります。仮に、現在貯金500万円を持つ30歳の夫婦であれば、定年である60歳までの30年間で2,500万円貯蓄すると考えます。次に、子どもの教育費や生活費、住宅ローンなどのことも考慮して、毎年の貯蓄目標を定めます。単純計算だと毎年80万~90万円(2,500万円÷30年)ですが、子どもの小さいうちはもう少し早いペースで貯蓄しておいたほうがよいでしょう。そうすると、30代の間は毎月10万円を目指すのがひとつの目安となります。
目標額と毎年・毎月のプランを決めたら、あとはそれを達成する手段を考えるだけです。支出を減らすために家賃や通信費を見直したり、収入を増やすために本業でがんばったり、副業によって収入の柱を増やしたりを検討します。また、値上がり益(キャピタルゲイン)や配当金・家賃収入(インカムゲイン)を狙って資産運用にコツコツと取り組むとよいでしょう。
老後の不安を解消するには、不安を「課題」の形へ具体化し、それを解決するための目標と手段を考えるしかありません。お金は一朝一夕で用意できるものではありませんから、少しでも早くから計画と行動を始めることをおすすめします。(提供:Incomepress )
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Source: 株式投資