4/23週号 日米共同声明で先送りしたツケに円が悩む展開
4/23週号 日米共同声明で先送りしたツケに円が悩む展開
ドル円予想レンジ106.10-108.80
「YES(そうだ)!」-。これは4/17のトランプ米大統領発言である。
日米首脳会談を終えて芝生の上を歩いて夕食会場に向かっていたトランプ大統領・メラニア夫人、そして安倍首相・昭恵夫人に「キム・ジョンウン(金正恩・朝鮮労働党委員長)氏と直接話しているのか?」と記者団が大声で問いかけた際にトランプ大統領が、クルッと振り返って笑顔で答えたのだ。
報道官は、「大統領が言ったのは米政権が(北朝鮮と)最高レベルで話をしたということだ。本人が直接話したのではない」と釈明したが、筆者はこの映像シーンを見て、米朝首脳会談に向けての進展と地均しを感じた。地政学リスクの観点では円買い圧力が緩んだ瞬間、とも言えそうだ。
日米共同声明で先送りした通商問題。日銀も動けず
4/19早朝に安倍首相とトランプ米大統領は共同記者会見を行った。北朝鮮問題に関しての日米共同歩調は改めて確認された格好となる。
一方の通商問題に関して市場が身構えたのは、トランプ米大統領による円安牽制や、内政干渉にもなりかねない日銀政策への言及だったが、当日の東京ドル円市場は肩透かしを食らった観だ。
しかし、秋の中間選挙で票に繋がる成果を求めるトランプ大統領が貿易赤字縮小・対日貿易の不均衡是正の看板を降ろすとは到底考えられず、麻生財務相・ペンス副大統領での日米経済対話から、新たな通商対話の枠組み(茂木経済再生担当相VSライトハイザー米通商代表部(USTR)代表)でじっくりと対峙する可能性が高い。
同日の記者会見で菅官房長官は、「双方の主張(TPPと二国間協議)は平行線だったのではないか」、とした記者からの指摘に対し、「そうした指摘には当たらない」と突っぱねたような反論を見せている。
しかし、米商務省による2017年の貿易統計によると、対日貿易赤字額が688億ドル(約7兆円)。今後の交渉テーブルにおいては、日本側に防衛装備品の調達、液化天然ガス(LNG)などのエネルギー、牛肉などの農産物の輸入枠の拡大が大幅に求められる、と考えるのが無難だ。
そして、仮に日本側が相応の購入を応じても、対日貿易赤字688億ドル(約7兆円)に向けた均衡・是正には遠い道のりとなりかねない。その場合、有権者・支援業界からの突き上げ次第では、業を煮やしたトランプ大統領が今後の交渉の過程で為替を意識した牽制球を投げるシナリオも読み込んでおく必要がある、と推考。GW直前の4/26-27日銀会合でも円安誘因と捉えられかねない施策は封じる、と睨んでいる。
4/16週のドル円
日足一目均衡表雲(下限106.12-72、上限108.255-109.31)枠を念頭に上値焦点は2/27高値107.69、2/22高値107.78、2/21高値107.92。越えたら2/13高値108.79。下値焦点は4/18安値106.995、4/17安値106.87、4/9-12安値圏106.60-69。割れたら4/4安値105.98、4/2-3安値105.68-65を推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト
Source: 株式投資