中国IT巨頭が保険業界で存在感 アリババ、テンセント、バイドゥ、京東、シャオミ……
中国IT巨頭が保険業界で存在感 アリババ、テンセント、バイドゥ、京東、シャオミ……
中国ネット通販2位の京東(JD)は4月中旬、安聯財産保険(中国)に5億3700万元を出資すると発表した。第2位の大株主になる。安聯とはドイツに本拠をおく世界有数の金融グループ、アリアンツの中国法人である。京東は、オンライン保険販売のブランドを手に入れた。それも極めて強力な看板である。
中国のIT巨頭は、ほとんどすべて保険業に切り込んでいる。中国保険業は沸点に達し“大爆発”の前夜にある。経済サイト「投資界」が、このようなタイトルで分析を行っている。中国の保険業界はどこへ向かうのだろうか。
保険業の改革を促すネット保険
従来型の保険業では、省を跨ぐ営業活動をするために、各省に販売会社を設立しなければならなかった。販売会社は2年間、省内の営業で実績を積み、初めて省外への展開を許される。
オンライン保険会社は、規定の範囲内の保険販売なら、この手続きを踏む必要はない。いきなり全国営業が可能となる。つまり従来型保険会社の側からも、オンライン販売の需要は大きいのである。そして効率の高いオンライン販売の増加によって、市場競争は激化する。
中国保険監督管理委員会(保監会)のデータによれば、オンライン保険業務を行う会社は大幅に増加している。2012年には39の保険機構がオンライン保険を運営していた。これが2016年には117社へと増加した。
一方中国保険行業協会の発表によれば、2017年のオンライン保険の収入見通しは2496億6000万元で、2016年比6.37%の伸びだった。あまり伸びていないように見える。
これは2016年以来、「保険公司股権管理辯法」の改正が相次ぎ、参入ハードルは上昇し、管理も厳重になっていること、新会社の体制がまだ整っていなかったことの影響もありそうだ。
BAT(バイドゥ百度、アリババ、テンセント)のスタンス
IT巨頭のアプローチはさまざまである。自社ブランドの確立、他社ブランドの買収、他社との提携、の主に3つである。BATのラインアップを見ていこう。
●アリババ テンセントと共同で衆安立ち上げ
1 衆安保険 2013年、テンセント、平安保険と共同で立ち上げた。超強力メンバーに支えられた国内初のオンライン保険会社。
2 信美人寿相互保険社 アリババグループのアント・フィナンシャルと天弘基金が、それぞれ3億元、2億500万元を出資して設立。純粋なアリババ系。
3 国泰産険 2016年7月、アント・フィナンシャルが増資引受け。
●テンセント(騰訊) 自前のブランドも設ける
1 衆安保険 アリババと共同で設立。
2 和泰人寿 2015年8月、騰訊が単独で設立準備を開始。2016年8月、営業許可取得。2017年5月、営業開始。
3 微民保険 2017年10月、保監会の営業許可取得。自前のブランド。持株比率57.8%。
●バイドゥ(百度) アリアンツと百安設立
1 百安保険 2015年、アリアンツと共同で設立。
2 汽動車相関保険 太平洋保険と共同で20億元を出資し設立。しかし営業許可は未取得。
3 聯保龍江保険 2017年10月、株式100%取得。
その他(京東、美団、蘇寧、小米)
京東は、冒頭紹介した通り、アリアンツに出資するという成果を挙げた。ただしこれまでの保険業へのスタンスは“曲線的”でBATには水をあけられている。ただし独自の保険ブランドを申請中という。そして2020年には世界三大金融科学技術企業の一つとなるとぶち上げている。
美団は、保険仲介機構の営業許可なら取得している。主要事業のフードデリバリサービスや、生活サービスには損害保険が不可欠であり、保険業務に直接従事することを目指している。
蘇寧は、2016年、蘇寧保険販売という会社の営業許可を取得している。小米は2016年に買収した北京宏源保険を小米保険に社名変更するという。
このようにIT巨頭は続々と参入を進めている。保険業界の競争環境は複雑化し、きびしさを増している。しかし保険業界は、中国の金融界の中で、もっともエネルギッシュな業界である。したがって、銀行業界のようにIT巨頭に膝を屈する形の提携にはならない。
強者同士のパワーの衝突によって、たしかに大小の爆発が起こらないともかぎらない。とにかく2018年は、小康状態だった2017年とは違うアグレッシブな展開になりそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
Source: 株式投資