顔認証でセキュリティはどう変わるのか!?その実情と可能性を探る

顔認証でセキュリティはどう変わるのか!?その実情と可能性を探る

2017年11月に発売が開始されたiPhone X。これまでのiPhoneと大きく異なる部分の中でも注目を集めているのが、Face IDによる顔認証だ。インターネット上では、ハッキングできるかどうか検証する記事が多く見られる。しかし、明らかにハッキングに成功したといえる事例はなく、今のところFace IDの有用性が認められる内容が多い。

コンシューマー製品にも搭載されるようになった顔認証機能。それが広まった背景と現状について紐解いていきたい。

さまざまな領域で展開が進む顔認証

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(写真=MaximP/Shutterstock.com)

iPhone Xで注目を集める顔認証技術だが、すでにパソコンのアクセス認証やビルの入退場管理、空港の出入国管理などに用いられている。特に、顔認証の普及に積極的なのが中国だ。Alibaba(アリババ)グループのAnt Financial(アント フィナンシャル)は、本社がある杭州のファーストフード店で「smile to pay」というサービスを提供している。顧客はあらかじめAlipayアプリに登録した顔認識を有効にした上で、POPにある3Dカメラで顔をスキャンすれば、Alipayのアカウントから支払いが完了する。キャッシュレス決済が進み、すでに「財布がいらないのでは」と言われている中国社会において、スマートフォン自体もそのうち不要になるかもしれない。

米国では、シカゴ警察が犯罪者の顔画像をデータベース化して管理している。その顔画像は450万人分にもなり、これを活用して画像を分析し、犯人の検挙に使用している。このような防犯目的においても、顔の画像データが利用されているのだ。

一方、国内の企業でも優れた顔認証技術を持つ企業がある。NECは、顔認証ソリューション「NeoFace」シリーズを展開しているが、そこで用いられている技術は、アメリカ政府機関の評価テストで世界No.1の精度・速度だと認定を受けている。

金融機関でも顔認証を用いてセキュリティを向上させようという動きがある。三菱UFJフィナンシャル・グループは、2017年10月に開催されたCEATEC JAPANにおいて、ホロレンズを活用した顔認証技術を展示している。将来のARを活用した次世代店舗実現に向けた取り組みだ。

なぜ顔認証の精度は上がったのか?

近年、AIの進化は著しいが、これは顔認証の精度向上にも大きく寄与している。なかでも、ディープラーニングの存在は大きい。読み取った特徴を数値にした「特徴量」の抽出などの技術が進化したことで、画像認識の精度を大幅に向上させることに成功している。

一般的な画像認識の流れは、まず画像から人間の顔を認識する。その後、目や鼻などをより詳細に認識して、特徴量を抽出、データベースに登録されているデータと照合する。そして、その結果がデータベースのものと一致すれば、認証が完了するという流れだ。

このとき、周囲が暗かったり、逆に明るすぎたりすると精度に影響が出てしまう。そのため、顔を認識する際の環境は非常に重要な要素となる。

また、画像データだけでなく、赤外線を使って顔の形状をより詳細に認識して、精度をさらに高める工夫をしている例もある。iPhone Xはこの赤外線も用いて認証を行っており、その精度を高めると同時にハッキングのリスクも抑えている。

スマートフォンやパソコンなどのITデバイスのセキュリティ向上は大きなテーマとなっていて、従来型の認証システムのセキュリティが万全なのかと、懐疑的な声もある。英数字を組み合わせたIDやパスワードによる認証についての議論があるほか、指紋を用いた生体認証は指紋を採取されるリスクなどが指摘されている。これらの事情を踏まえると、顔認証は今後、ITデバイスのセキュリティを向上させる有力なソリューションになる可能性は高いだろう。

顔認証が当たり前になり「顔パス」が当たり前の時代は到来するのか

このような背景もあり、顔認証の技術はより身近な存在になりつつある。顔を認証する速度と精度が大幅に向上したのは、普及に向けた大きな一歩であり、今後もその技術がさらに向上することで、より一般的なものになるだろう。

とはいえ、顔認証にも課題がないわけではない。特に、プライバシーの問題は顔認証技術の普及を進める上で議論になるだろう。顔認証の精度が上がることで、インターネット上に映る画像から、本人が容易に特定されてしまう危険性があるのだ。また、監視カメラの映像を解析することで、そこに映る人がいつ、どこにいたか判明してしまうこともプライバシーの観点から見れば問題になるかもしれない。万が一、このデータが流出するような事態になれば、企業にとっても責任問題となるだろう。

このような観点からすると、あらゆるサービスで顔認証が導入されるまでには、時間がかかるのではないだろうか。技術の進歩は著しいものの、それを活用するためのルール作りがまだ追いついていない。「顔パス」が当たり前になるのは当分、先になるかもしれない。(提供:MUFG Innovation Hub

執筆:山田 雄一朗

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Source: 株式投資
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