中国のユニコーン企業が多角化、DJIはAI医療映像 滴滴は消費者金融へ進出

中国のユニコーン企業が多角化、DJIはAI医療映像 滴滴は消費者金融へ進出

中国におけるユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場ベンチャー)の存在感は、半端ではない。新しい分野の象徴として、光輝いている会社はたくさんある。大型投資もすれば、多角化を指向し始めたところもある。

そんなおり、代表的なユニコーン企業の他業種進出が2件伝えられた。ライドシェア(配車アプリ)の滴滴出行と、ドローン製造のDJI/大疆である。ニュースサイト「今日頭条」など複数のメディアが伝えている。歴史の浅いユニコーン企業の多角化に、死角はないのだろうか。

DJI/大疆、医療映像に進出

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(画像=testing / shutterstock.com ※2017年8月、北京)

DJIはドローン製造で断トツであり、世界シェアの70%を握っているとされる。ここ3年間の売上と利益を見てみよう(1元=17.09日本円)。

2015年 59億8000万元/14億2000万元2016年 97億8000万元/19億3000万元2017年 175億7000万元/43億元 

となっており、倍々ゲームに近い高度成長だ。これを見る限り、何の不安もなさそうである。そのDJIが“新一輪”融資として10億ドル(63億元=1077億日本円)を調達するという。“新”というからには、新しい事業に投じようとしているのである。すでにDJIは未来発展の三大方向を提示している。

1 医療映像AI市場、年市場規模50億ドルが見込まれる。2 3歳児からの科学技術教育課程、この年市場規模は100億ドルが見込まれている。3 人工智能、ロボットと関連市場。

経済界では、この中で最も好ましい方向は1の医療映像AI市場ではないか、と見ている。ただしこの部門は、テンセント/騰訊が、国家AIプロジェクトの指定を受け、先行している。そして、中核業務の拡張をするのではない、という姿勢には疑問を呈する向きが多い。何しろ10億ドルもの巨額である。

滴滴出行の消費者金融

滴滴出行は4月中旬、「滴水貸」という名のネット金融商品を公開した。配車を予約した顧客に対し貸出可能額の表示を可能にした。最高信用限度額は30万元である。

滴滴出行は中国ユニコーン企業の中では、アント・フィナンシャルに次ぐ2位にランクされている。配車アプリではガリバー企業だ。2017年のGMV(Gross Merchandise Volume 一定期間の成約総額)は250~270億ドルと見られている。しかし、配車アプリで2億ドル、全体では3~4億ドルの欠損を出しているとされている。投資先行型なのである。

2017年末における配車アプリ顧客数は、4億5000万人で月間74億3000万件の取引があった。

10億のユーザーを持つSNS「微信」を運営するテンセント(騰訊)には「微粒貸」という消費者金融商品がある。微粒貸の一人当たり貸出残高は8000元、貸出総額は1000億元を超えている。

「滴水貸」もユーザー数、お金の必要なタイミングの良さや、ビッグデータなどから、微粒貸と同様の規模が期待できると考えられている。すると1000億元の貸出しで利率3%、30億元(4億7600万ドル)の利益が見込める。つまり滴滴出行の財務基盤を決定的に変える契機となり得る。業界では、これを滴滴の“第二次世界大戦”とも呼んでいる。戦後の様相は大きく変化するという意味だろう。

多角化へのアプローチ、評価は対照的

両者の多角化へのアプローチは異なっていた。世界市場を支配し、利益率の高いDJIは異業種へ、赤字の滴滴出行は、それを補うべく金融業へ進出しようとしている。

世評はDJIに厳しいようだ。ドローンの未来は楽観視できない。宅配はいつまでたっても実験段階の域を出ないし、期待の農業用途にも不安は残っている。そのための先取りの動きとしても、早すぎる印象の多角化は、疑問の声を抑えきれない。同社のCEOは「我々は、できもしないことを発表したりはしない。」と不安を打ち消さざるを得なかった。

それに対して滴滴の多角化への取り組みは成功するだろうという意見が多い。とにかく多角化は始まったばかりである。その成否はまだ分からない。

分かっているのは中国ユニコーン企業の影響力の大きさである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)


Source: 株式投資
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