円安の背景

円安の背景

円安が進んでいる。

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

ドル円は一目均衡表の雲を上抜けて、一時109円台半ばまであった。次の節目は110円の大台。200日移動平均もその水準に下がってくる。一旦は頭を抑えられるだろう。

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(画像=マネックス証券)

年初からの円高がピークアウトして円安に転換したのはちょうど1か月前だ。1か月前に何があったのか?僕がテレビに出て、「これ以上、円高にならない」と述べた。その声が市場に届いたのだろう。

3月28日のBSジャパン「日経プラス10」で、「理屈のうえではドル安(円高)にならない」と解説した。理屈というのは国際マクロ経済学の理論では、トランプ政権がとっている保護貿易政策や財政拡張政策というのはIS曲線の右上方へのシフトを促し、自国通貨高につながるというものだ。

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もちろん相場は理屈では動かないが、需給面を見てもシカゴの先物市場の投機筋の円売りポジションもすべて巻き戻され、円買いの潜在需要は解消されていると述べた。よって円高が止まるのは時間の問題だった。

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そこから円安を促す材料が増加した。前回のストラテジーレポートで述べた通り、一時は執拗に喧伝された日銀の早期金融緩和縮小観測が鳴りを潜めた。事実上、出口議論が封印されている。これも円安に動いた要因のひとつだ。

米国の長期金利が3%をつけたことで、さすがに為替も金利に連動するようになった。しかし、これも、様々な要素が絡み合ってのことだ。金利そのものだけでは為替は動かない。その金利に惹きつけられてその通貨を買う主体がいるかどうかである。事実、これまでも米国金利は上昇していたがドルは買われなかった。地政学リスクや貿易戦争のリスクがあって、安全通貨とされる円買い需要が強かった。それがここにきて朝鮮半島のリスク緩和ムードが高まり、米中貿易摩擦もエスカレートする兆しがなく、ようやくリスクをとれるようになった。

それがこの日本の新年度入りのタイミングに重なった。財務省が発表した対外証券投資の状況によれば本邦投資家は過去2週連続で外貨資産を1兆円規模で買い越している。リスク要因が後退したこと、年度変わりに伴うポジション調整が終了して新規ポートフォリオの構築タイミングであること、そこに米国債が3%という魅力的な水準を提示したこと ‐ これらがすべて重なって外貨資産に買いが向かったと思われる。ヘッジコストも高まっているので、おそらくヘッジなしの外貨投資が主だろう。ドルの上昇要因となる。

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円安に転換したのはちょうど1か月前だと述べた。1か月前に何があったのか?確かに僕もテレビで為替を語ったが、それに劣らない材料があった。今週、相場の目玉となっている武田薬品のシャイアー買収報道が出たのも、ちょうど1か月前のことであった。7兆円規模の買収に伴い、7兆円の円売りが発生する可能性が市場を動かした。ソフトバンクが英アームホールディングを買収した時、当時は3兆円規模の買収だったが、やはり円安材料となった。

決算発表本格化のタイミングで円安となって株式市場にとってもポジティブだ。日本電産やファナックなどが出している想定為替レートは1ドル100円。相当保守的な見通しに見える。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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Source: 株式投資
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