初任給40万円、従業員28人、平均年齢35.4歳の上場企業「フィル・カンパニー」ってどんな会社?
初任給40万円、従業員28人、平均年齢35.4歳の上場企業「フィル・カンパニー」ってどんな会社?
電車や街中で「就活スーツ」に身を包み、真新しいビジネスバッグを持った就活生らしき若者を多く見かける。2019年卒学生の就職活動も本格化したようだ。3月1日に会社の説明会が解禁され、6月1日からは各社の面接選考が始まる。リクルートキャリアによると4月1日時点での就職内定率は19.9%と昨年同時期よりも5.4ポイント高いとか。就活生にゴールデンウイークなど関係ないのだろう。
ところで、先日大手新聞社が実施した初任給に関するアンケート調査によると、第1位はフィル・カンパニー でその金額はなんと「40万円」だという。並みいる大企業をおさえて「初任給ランキング」のTOPに立ったフィル・カンパニーとはどんな会社なのだろうか。詳しく見てみよう。
新入社員の平均年収の「2倍」
バブル世代の筆者の就職活動は、インターネットがない時代であった。大学に求職票を見に行ったり、ゼミの先輩や友人から情報をもらうのが精一杯で、就職情報を手に入れるのは大変だった。スマホもない時代で、情報どころか地図だって簡単には手に入らない。就職活動が夏だったので慣れないスーツで大汗をかきながらオフィス街を迷いまくったものである。
それに比べ、ミレニアル世代の就職活動はどうだろう。パソコンやスマホの普及により、就活生の情報収集は格段に高まった。その会社の事業内容や年収はもちろんのこと、ネット上での情報交換も活発でブラック度合いなどもたちどころに分かる。就職先を「知名度だけ」で判断するのでなく、その会社の実態をかなり把握したうえで就活ができるのはうらやましい限りだ。
フィル・カンパニーの知名度は決して高くはないが、前述の「初任給ランキング」が報じられたことで、注目度が高まっているのではないだろうか。2018年度の初任給は40万円で、2位の35万円をブッチギリでリードしている。固定残業代込みということだが、単純計算で年収480万円だ。報道によると、アンケートに回答した会社の初任給の平均は「約21万5000円」ということなので、新入社員の平均年収の「2倍」になる計算だ。
フィル・カンパニーが創造する「空中店舗」ってなんだ?
フィル・カンパニーは、2005年設立の若い会社で、2016年11月には東証マザーズ市場にIPOを果たしている。東証マザーズ市場はベンチャー企業などの若い会社でも上場しやすいように開設されたマーケットで、「将来の成長期待」から個人投資家の人気も高い。
フィル・カンパニーは、「空中店舗」という駐車場の上部の空きスペースをうまく活用したビルを、土地のオーナーに提案・設計するのを事業の柱としている。ニッチな領域ではあるが、その独創的ともいえる「空中店舗」で急成長している企業なのだ。
「空中店舗」とは現有のコインパーキングなど駐車場の上のスペースに店舗やオフィスのテナントを建てて「有効活用」するというもの。フィル・パークの「空中店舗」はデザイン的にもなかなか美しく、近未来のSF映画を観ているようでもある。
たとえば、上記の写真は2009年竣工の「フィル・パーク表参道」である。筆者も実際に見たことがあるのだが、コインパーキングの上に美容院などのフロアを併設したそのビルは「表参道」にふさわしいスタイリッシュなデザインだ。
フィル・カンパニーはこうした施行例を100件以上も有しており、そのほとんどをWebサイトで見ることが可能だ。デザイナーのセンスが光るビルであるが、特徴的なのは外観だけではない。駐車場収入を残しつつ、テナント収入も得られることで「利回り」が向上し、投資回収が早いというメリットもある。土地のオーナーに対し、提案・設計・施行・テナント誘致まで一貫して請け負うことでフィル・カンパニーは順調に業績を拡大しているのだ。
営業利益は72%増を予想
ちなみに、2018年11月期の会社予想売上は59%増の47億円、本業の実力を示す営業利益は72%増の5億1000万円を見込んでいる。
4月12日には2018年11月期の第1四半期決算(12〜2月)を発表し、2018年5月中間予想売上を13億円から14億3000万円に10%、営業利益を4000万円から1億円に2.5倍に上方修正している。目下のところ、2018年11月通期の予想は据え置いているが、通期でも業績の上乗せとなる可能性が高そうだ。
今期を含めた過去3年の平均増収率は49%、平均営業増益率は51%と高成長だ。営業利益率も10%を超えおり、労働集約的な建設関連企業としては好採算といって良い。
小さいながらも「育ち盛り」の会社
就職情報のDODA(デューダ)によると、フィル・カンパニーの2018年2月時点での従業員数は連結ベースで28人、従業員の平均年齢は35.4歳、平均勤続年数は1.6年である。フィル・カンパニーは文字通り「少数精鋭」の会社なのだろう。同社は東証1部への指定替えの基準をすでに満たしているようで、3月には東証への市場変更の申請を行っている。東証1部になれば、さらに知名度があがりビジネスチャンスも増えそうだ。
昨年、フィル・カンパニーは日本郵政キャピタル、いちご との資本業務提携を発表した。日本郵政グループに加え、REITなどを組成する不動産の流動化に強いいちごとの提携は「シナジー効果」を生むのではないかと期待されている。このほか、ガレージハウスの企画会社や飲食店のデジタルマーケティング会社とも提携。インバウンド向けの宿泊施設、シェアハウスとしての空中店舗の利用も考えているようで、今後も独創的な「空中店舗」を生み出すのではないか、と筆者は期待を寄せている。
それにしても、フィル・カンパニーのような小さいながらも「育ち盛り」の会社情報を簡単に得られる現在の就活生は本当にうらやましく思う。21世紀のいまの時代、「就職は一生」という考えは古いのかもしれない。だが、それでも就職は人生で重要なイベントの一つであることに変わりないだろう。情報を最大限に活かし、悔いのない就職活動を送られるよう、就活生にエールを贈りたい。
平田和生(ひらたかずお)慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。
Source: 株式投資