「保険」と「共済」はどう違う? 運営目的や保障内容を比較

「保険」と「共済」はどう違う? 運営目的や保障内容を比較

保険も共済も性質は似ているが、適用法令や運営目的、使われる用語、費用面などに違いがある。保険に加入するべきか共済に加入するべきか、それぞれの特徴を理解して比較することが重要だ。

保険と共済の大きな違いとは?

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(画像=PIXTA)

保険と共済の最も大きな違いは、保険は民間会社が「営利」を目的に事業運営しているサービスであることに対し、共済は共同組合などが会員同士の「助け合い」のために運営されているという点だ。

民間の保険会社が提供する生命保険や損害保険は、それぞれの保険会社が一般消費者に対して加入を勧める。一方で共済では、都道府県や市町村などの地方自治体や民間企業、民間企業の労働組合などの中で提供され、共済によって加入要件は異なるものの、組合員になることで各共済に加入する資格を有するのが一般的だ。

一般的には、共済の方が掛け金が安く、加入までに要する時間も短いとされる。掛け金が安く抑えられているのは、民間の保険会社よりも宣伝費用などの経費を抑えるなどの取り組みをしているからだ。一方で、共済で選べる保障内容などの種類は民間保険と比較すると少ない。

その点では、民間の保険会社が提供する保険商品は、掛け金や保障内容、保障条件などを組み合わせたさまざまな商品があることが強み。加入者に対する電話サポートなども共済より手厚くなっていることも多い。

また保険と共済では、用途や性質は同じでも使われる用語が異なる。保険では「保険金」「保険料」「配当金」という言葉を使うのに対し、共済では「共済金「共済掛金」「割戻金」という言葉が使用される。

保険と共済では適用法令や所管が異なる

また適用される法律・法令も保険と共済で異なっている。

保険の場合は「保険業法」が保険業を営む場合に適用される。この保険業法は1939年に制定されたが、1996年に全文改正が行われた。保険業法では、保険会社とこれらの会社が提供する保険商品、勧誘などに対する監督内容や規制内容が定められている。監督と規制を行う主体は金融庁だ。

そのほか、保険事業に関連する業界団体がそれぞれ自主規制規則と呼ばれるガイドラインを設けている。こういったガイドラインを設けているのは、一般社団法人生命保険協会や一般社団法人日本損害保険協会だ。

生命保険を提供する民間企業は生命保険業免許を、損害保険を提供する民間企業は損害保険業免許を受けなければならない。保険業法によって規定される保険事業全体を俯瞰すると、保険事業は「保険業」と「少額短期保険業」の2タイプに分類される。保険業は、さらに生命保険業と損害保険業に分類される。少額短期保険業とは、保険期間が2年以内で保険金額が1,000万円以内の保険商品を提供する事業のことを呼ぶ。

共済で適用される法律は?

共済の場合には保険業法は適用されない。その代わり、それぞれの共済ごとに適用される根拠法が決まっている。例えば、全国共済農業協同組合連合会が提供する「JA共済」の場合は農業協同組合法、日本コープ共済生活協同組合連合会が提供する「CO・OP共済」では消費生活協同組合法というように、それぞれ適用される法律が異なっている。

保険の場合は金融庁が所管するが、共済の場合は所管庁が適用される法律によって異なる。農業協同組合法や水産業協同組合法の場合は農林水産省、消費生活協同組合法の場合は厚生労働省、中小企業等協同組合法の場合は経済産業省といった具合だ。

また共済の場合は、これらの共済関連法とは別の特別法を根拠に提供される共済もある。例えば、独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供する「経営セーフティ共済」(中小企業倒産防止共済)などがこれに該当し、中小企業倒産防止共済法を根拠としている。そのほか、地方公共団体が共済団体として住民や外国人登録者に提供する「交通災害共済」など、免許を受けずに提供が可能な共済商品もある。

死亡保険や医療保険などに分類される生命保険

ここからは生命保険の細かな分類について説明したい。

生命保険は一般的に、「死亡保険」「医療保険」「がん保険」「学費保険」「傷害保険」などに分類される。それぞれの保険によって満了時に返戻金があったり、保障額が加入期間によって変化したり、適用範囲が変わったりとメリットやデメリットが異なる。

死亡保険の場合は主に「定期保険」「終身保険」「三大疾病保障保険」「養老保険」などに分類される。

定期保険は保障期間を一定に定め、保険料が安い割には保障が大きいのが特徴だ。期間の満了時に返戻金が受け取れるタイプやそうではないタイプなどがある。保障期間が定められているため、当然期間終了後は保障は継続されない。

終身保険は定期保険と比較した場合、加入者が支払う保険料は高い。その代わり、生涯にわたって保障があることが大きなメリットとなっている。終身保険には、保険料の支払い期間を区切っているタイプと生きている間ずっと払い続けるタイプの2種類に分かれる。保険料の支払い区切っている場合は、例えば「60歳まで」「65歳まで」とされていることが多い。

三大疾病保障保険や養老保険とは?

三大疾病保障保険は「特定疾病保障保険」とも呼ばれる。三大疾病保障保険では死亡保障がつくことに加え、三大疾病とされる「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」を発症したときにも保障を受けることができるという保険だ。

死亡リスクが高い三大疾病を発症した場合、治療に必要な費用が高額になるケースが多い。医学の発達により、長期の治療を経て症状が回復するケースも増えてきており、期間が長くなる分、治療費の合計額が増えていくからだ。三大疾病保障保険は、この高い医療費の負担をカバーすることが加入目的の一つとなっている。

そのほか、将来の生活資金に対する備えとして用意されているのが養老保険。養老保険は定期保険や終身保険に比べると、同じ保障内容であっても保険料が高くなるケースが多いが、満期になると満期保険金が受け取れる。この満期保険金と死亡保障額は同額となるのが特徴の一つだ。

医療保険ではどのような保障がある?

医療保険は、入院したときに受け取ることができる「入院給付金」と手術を受けたときに適用される「手術給付金」が組み合わさった保険商品だ。

医療保険によって入院給付金の金額や適用入院期間、支払い限度日数などが異なる。金額は「1日5,000円」「1日1万円」などと定義され、適用入院期間では深夜零時をまたがない日帰り入院から適用されるものや、1泊2日以上や4泊5日以上などが適用条件になっているものなどがある。

支払い限度日数は、1回の入院で何日分までの入院給付金を受け取ることができるかを定めたもの。30日、60日、180日、360日などと医療保険によって日数が異なり、一般的には支払い限度日数が多ければ多いほど保険料も高額になる。この点は、給付金額や適用入院期間の条件と同様で、条件が良くなければ良くなるほど保険料が上がる。

手術給付金には、手術の内容を問わずに給付金が一律の金額で支払われるタイプと、手術の内容によって給付金額が変化するタイプに分かれる。

医療保険には「特約」と呼ばれるオプションもある。代表的な特約としては、女性疾病特約や先進医療特約などがよく知られている。この特約を途中で解約したとしても、入金給付金と手術給付金の主契約自体は継続される。そのためこの特約は副契約としての性質を持つ。

がんと診断されたときにも一時金を受け取れるがん保険

がん保険は「がん診断給付金」「がん入院給付金」「がん手術給付金」の主契約と、特約で構成されている医療保険だ。がん診断給付金は医療機関でがんと診断されたときに給付される一時金で、がん入院給付金とがん手術給付金は前項で説明した一般的な入院給付金・手術給付金と同様の性質を持つ。

がん保険の特約については、必要性を感じて加入する人も多い。がん治療は年々治療技術が進歩しており、より生存率を高めるためにこれらの先端治療を受けるかどうかの判断を迫られるときがある。がん保険の特約には「先進医療特約」などが用意されている。この特約では先進医療の治療費や抗がん剤治療費、通院治療費などに対応している。

子供の将来を考えて教育費を積み立てる学資保険

学資保険の目的は、自分の子供が将来必要になる教育費を積み立てていくことを目的とした保険だ。学資保険では一般的に、契約者である両親・保護者が亡くなったり、重い障害を負ったりしたときなどには、加入自体は続くものの保険料支払いが免除されるという要件がついている。そのため、将来の自分の子供のためにという思いから加入する人も多い。

そのほかにも、個人年金保険や傷害保険など、さまざまな保険商品が民間の保険会社によって提供されている。

共済の種類は?火災共済、生命共済、傷害共済……

共済は主に「火災共済」「生命共済」「傷害共済」「自動車共済」「年金共済」などに分類される。さらに「慶弔共済」「家畜共済」「畑作物共済」「果樹共済」などと各協同組合が独自に提供している共済もある。

共済を提供している協同組合などによって、カバー範囲は異なる。例えば農業協同組合が提供している共済は前述した火災共済、生命共済、傷害共済、自動車共済、年金共済のほか、子供の教育資金を準備することを目的としたこども共済、イベントや催しなどの最中の傷害や賠償責任事故に対して保障するイベント共済など、多岐にわたる。

一方で生活協同組合が提供している大学生協共済では、火災共済と生命共済には入ることができるが、傷害共済や自動車共済、年金共済などは取り扱いがない。交通共済協同組合が提供する共済は、原則的には自動車共済のみが取り扱われている。このように協同組合などが提供する共済によって、共済内容が異なってくることを覚えておきたい。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)


Source: 株式投資
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