資生堂の新しい中国戦略、店舗を再強化、新型機器で越境Eコマース提供
資生堂の新しい中国戦略、店舗を再強化、新型機器で越境Eコマース提供
資生堂は中国で新しい販売戦略を実行に移しつつある。経済サイト「界面」が伝えた。資生堂の中国展開の歴史を振り返りながら、新戦略の成否を探ってみよう。
資生堂中国の歴史
中国における資生堂の歴史は1981年、北京友諠商店、北京飯店など9ヵ所で60種の商品を販売したことから始まる。1993年には早くも北京に工場を建設している。販売、生産とも中国市場への進出は非常に早い。
2003年12月には資生堂中国投資有限公司(上海)を設立し、ここで中国事業を統括することにした。翌年からは、日本と同様に専売店事業の展開を始めている。化粧品を販売するだけでなく、中国女性に正確な使用方法をを紹介し、さらに新しい美容の提案も行った。資生堂専売店は、服飾やヘアースタイルを含めたファッション文化の発信を目指していった。
現在では中国に生産工場、研究開発センター、美容部員の訓練センターを持ち、中国独自の一貫体制を整えている。大型ショッピングセンター1Fにおいて、定番ショップとなっているのも、日本百貨店の風景と変わらない。知名度の高さも同様である。
大型機器で越境Eコマースを展開
資生堂中国は、ネット通販にも力を入れている。資生堂官方旗艦店(自社公式販売サイト)の他に、ネット通販首位、アリババの天猫(T-MALL)にも出店している。2017年の双十一(11月11日独身の日セール)では、ユニクロ、シャープ、ソニー、資生堂の日本企業4社が、1日で17億円(1億元)以上を売り上げる“億元クラブ”入りを果たしている。
資生堂はオフライン、オンラインとも順調に中国ビジネスを展開しているように見える。
そんな中、2018年3月資生堂中国は、優秀専売店を集めた大会の席上、新零售(O2O融合の新小売業形態)に関する発表を行った。オフラインの実体店(専業店)の改造に着手し、今後、段階を踏みながら大型の電子端末機器を配置していくという。
この自動販売機大の機器には、「資生堂官方美粧星品館」という新プラットフォームが搭載されている。資生堂の18ブランド、400SKUを超える商品を、越境Eコマースにより購入できるようにする。
まず18ブランド100SKUを投入、6月に400SKUへ順次増やしていく。資生堂の海外製品を自らが主体となって中国市場に引き込む。4月中旬に機器を導入した4店舗では、2週間で1000人以上の顧客を吸引し、5万元を超える売上を記録した。
実体店舗は復活するか
中国における化粧品店の最も重要な問題は、“専門店感覚”が弱まり、顧客の来店率が低下していることにある。美容体験の提供や、高度なサービスレベルと顧客管理も、リピーターの低下を防げない。資生堂は、さらに多くの資源を投入し、サービス体系のレベルアップ、多彩な消費体験の提供を目指さざるを得ない。
資生堂は2018年から“新三年計画”を始動させた。中国市場におけるブランド力のアップを図るとともに、デジタル化、オンライン化の発展を目指すものである。
デジタル化、オンライン化は、資生堂グループにとって世界的な最重要戦略だ。世界各地で主流のネット通販と提携し、消費者データ収集と顧客管理を徹底する。各地区の統括会社と提携ネット通販との協力関係を強化し、データの集中管理を目指す。そのために3年間で270億円を投資する。
中国店舗における大型機器の導入は、こうした構想にそったものに違いない。従来型の専売店は、劣化が進んでいたのである。顧客を店舗に呼び込み、新型機器を操作してもらい、中国市場に未投入の商品を越境Eコマースで提供する。これを機に店舗の“娯楽性”を高めたいとしている。
アリババや京東(JD)などネット通販大手の主導するO2O小売融合というより、オンラインとオフラインの間に存在意義を見出したいようだ。専売店への集客への切り札となるかどうか。体制の整う6月以降の数字に注目したい。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
Source: 株式投資