住宅ローン控除には「確定申告」が必要 適用条件や申請方法を確認
住宅ローン控除には「確定申告」が必要 適用条件や申請方法を確認
住宅ローンでマイホームを購入した際に利用できる減税措置が住宅ローン控除である。知名度も高く、住宅ローン利用者の多くが活用を検討する制度である。ただ、制度の利用にあたっては確定申告が必要で、会社員などにはややハードルが高く感じられるかもしれない。申請漏れや申請不備のないように、制度の概要や申請方法を確認しておこう。
住宅ローン控除 まずはその概要を把握
住宅ローン控除とは、住宅借入金等特別控除と呼ばれる制度の通称であり、マイホームをローンで購入した場合に、その年末残高の一定割合に相当する金額が所得税や住民税から控除される制度である。
2021年までに住宅を購入し、新たに適用を申請する場合、10年間、毎年の年末時点でのローン残高の1%が控除される事となる。各年の控除限度額は40万円(認定長期優良住宅等の場合は50万円)となっている。10年間、住宅ローン残高が4000万円以上ある場合には、最大で合計400万円(認定長期優良住宅等の場合は500万円)の税額控除を受ける事が可能である。
住宅ローン控除の適用要件は? 投資用物件には適用されない
住宅ローン控除は住宅購入を促す目的で導入されており、多くの人が利用可能な減税制度となっている。ただし、制度の適用には購入する住宅の使途や種類、所得等の制限もある。
まず購入する住宅の使途について、適用を受ける期間中、マイホームとして居住している必要がある。セカンドハウスや投資用物件への適用は認められない。転勤等の事情により、その住宅を離れている場合にも、その期間は住宅ローン控除の適用を受ける事ができない点にも注意したい。
購入する住宅についても制限があり、家屋の床面積は50平方メートル以上である事が求められる。また、原則として、中古住宅は築年数が20年以内(マンション等の耐火建築物は25年以内)の物件が対象となり、それを超える場合には、耐震性能等の証明が必要となる。なお住宅購入ではなく、増改築を行う場合でも、バリアフリー改修や省エネ改修等の目的である場合には、適用を認められる可能性がある。
所得については、年間の所得金額が3000万円を超える場合には、住宅ローン控除の適用を受ける事はできない。
他にも、住宅ローンの返済期間が10年以上である点や、民間金融機関や住宅金融支援機構等から借り入れているローンのみが対象となる点、贈与によって住宅を取得した場合には、適用が認められない点にも注意したい。
住宅ローン控除の利用に際しては、事前に適用要件を満たしているかの確認を行っておく事が重要となる。
住宅ローン控除の申請には確定申告が必要
適用要件を満たしており、住宅ローン控除の適用を申請する場合、どのような手続きを踏めば良いだろうか。
住宅ローン控除の申請において、最も重要な点は、確定申告を行う必要がある事であろう。会社員で年末調整を行っている場合でも、住宅ローン控除の申請を行う際は、確定申告が必要となる。住宅ローン控除の申請で初めて確定申告を行うという人も多いだろう。
確定申告は、毎年1月1日〜12月31日までの1年間に生じた所得の金額に基づき、所得税等の税金を確定させる為の手続きである。原則として、1年分の申告を翌年2月16日〜3月15日までの1カ月間で行う必要がある。住宅ローン控除の申請を行う場合には、住宅を購入した翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告を行う必要がある事は覚えておきたい。
住宅ローン控除の具体的な申請方法は?
住宅ローン控除の申請には確定申告を行う必要があるが、次にその具体的な手続き方法を説明していこう。
住宅ローン控除の適用を申請する場合、確定申告において、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書」を提出する必要がある。これは、住宅ローン控除による控除額の計算書類であり、住宅ローン控除適用の申請書のような役割を果たしている。税務署で入手する他、国税庁のWebサイトからダウンロードすることもできる。
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書」に加え、「登記事項証明書」や住宅ローン借入金融機関から毎年発行される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」、住宅や土地の「売買契約書」等を併せて提出する必要がある。これらの書類は住宅ローン控除の適用要件を満たしているかを判断し、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書」によって申請された控除額が妥当であるかを確認する為に使われる。
購入した住宅が認定長期優良住宅などである場合には、それを証明する書類の提出も必要となる。また、購入した住宅が築年数20年(マンション等の耐火建築物は25年以内)を越える中古住宅である場合も、耐震性を示す書類を提出する必要がある。
もちろん、確定申告書の提出も必要だ。基本的に会社員であれば「確定申告書A」、個人事業主等であれば「確定申告書B」を使う事となる。マイナンバーの分かる書類や本人確認書類に加え、会社員であれば、源泉徴収票も必要となる。
これらの書類を期間内に税務署へ提出すれば、住宅ローン控除の適用申請は完了となる。
2年目以降は確定申告が不要になる?
住宅ローン控除の適用申請には確定申告が必要であると説明してきたが、先程の申請方法は住宅ローン控除の適用を初めて受ける場合の申請方法である。住宅ローン控除は最大で10年間適用されるが、2年目以降の申請手続きは初年度とは異なる。
初年度の申請については、適用要件の確認を行う必要があり、提出書類も多く、確定申告が必須となっている。ただ、2年目以降については、適用要件の確認は不要となる為、必要書類が簡素化され、会社員の場合には、年末調整での手続きで済むようになる。
年末調整で手続きを行う場合には、「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が必要となる。これは確定申告を行った年の10月頃に税務署から送られてくる。この書類は以後9年分がまとめて送られてくる為、保管して毎年利用する。この書類と住宅ローン借入金融機関からの「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を勤務先へ提出すれば手続き完了となる。
個人事業主等の場合には、2年目以降であっても確定申告で手続きを行う必要がある。ただ、会社員の場合と同様、こちらも初年度と比べると必要書類は少なくなる。確定申告書等の基本書類に加え、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の計算明細書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を提出すれば良い。
住宅ローン控除 所得税の控除処理はどのように行われる?
さて、ここまでは住宅ローン控除の概要と申請方法について説明を行ってきた。適用要件を満たし、確定申告や年末調整での申請を行えば、手続き自体は終了となる。では、その後の税金の控除処理はどのように行われるのであろうか。
まず、会社員の場合であるが、住宅ローン控除の初年度に控除される所得税は基本的に還付金という形で受け取る事となる。対象となる年の所得税は源泉徴収で納付している為だ。還付金については、「国庫金振込通知書」という書類が届いた後、確定申告時に指定した金融機関へ振り込まれる事となる。また、郵便局の窓口で直接受け取る方法を選択する事もできる。一般的に確定申告を行った後、1、2カ月で還付金の支払いが行われる。4月末になっても「国庫金振込通知書」が届いていない場合は、一度税務署へ確認を行ってみるべきだろう。2年目以降については、年末調整による処理となる為、12月の年末調整で控除処理が行われ、所得税が還付される事となる。
個人事業主等の場合には、確定申告時の支払うべき所得税の計算を行う際に、控除額を差し引く事となる。確定申告によって確定する所得税額が控除済みの金額となっている為、原則として、還付金の受け取り等は不要である。
住民税の控除は翌年の住民税に反映される
住宅ローン控除は所得税からの税額控除が原則であるが、支払う所得税額が控除額より少ない場合、控除しきれなかった金額を住民税から控除する事ができる。
所得税の控除は申告対象年の所得税から控除を行う事となるが、住民税からの控除については、翌年の住民税からの控除となるので注意したい。住民税からの控除が適用される場合、翌年の住民税額が控除額の分だけ減額される事となる。これは初年度や2年目以降、会社員や個人事業主といった違いに関係なく、一律でこのような処理となる。
住民税からの控除が必要な場合、その分は還付金としては支払われない為、しっかりと認識しておきたい。翌年の住民税の金額を見て、控除額が差し引かれている事を確認しよう。尚、住民税からの控除を行う際に特別な手続きは不要であるが、住民税から控除される金額には限りがあり、必ずしも所得税から控除しきれなかった金額の全てが住民税から控除されるわけではない。
また、住民税からの控除が行われる場合、その窓口は居住地の市区町村役場の税務課となる為、不明点等の問い合わせもこちらに行う必要がある。
「確定申告」という言葉で敬遠しないように
住宅ローン控除の目的は住宅購入の促進にある。多くの利用者を想定しており、手続きも比較的シンプルで分かりやすいものとなっている。会社員の方は、確定申告が必要という言葉だけで面倒に感じがちであるが、概要と手続き方法を確認すれば、決して敬遠するような作業ではない事が分かるのではないだろうか。
住宅ローン控除の控除額は一般住宅の場合で年間最大40万円と大きな金額となっている。また、適用要件も多くの人が対象となるように定められている。マイホームの購入時には積極的に活用していきたい。(ZUU online編集部)
Source: 株式投資