「衰退市場で成長する銘柄」「福がある残り物」-儲かる銘柄の発掘方法

「衰退市場で成長する銘柄」「福がある残り物」-儲かる銘柄の発掘方法

個人投資家は狙うべき銘柄とは?時価総額100億円未満の銘柄、アナリストがフォローしない銘柄、市場が衰退するのに成長する銘柄など、儲かる銘柄の選び方を紹介します。

(本記事は、藤本誠之氏の著書『難しいことは嫌いでズボラでも株で儲け続けるたった1つの方法』=SBクリエイティブ、2017年6月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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ズボラでも儲け続ける方法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

大リーグのプロ野球より、草野球で勝て!

株の投資法はそれこそ星の数ほどあります。コツコツやるのもいいのですが、ここはひとつ、ガツンと儲けたいもの。そこで推奨したいのが、株価の伸びしろが大きい銘柄を買うことです。

小さい会社こそ伸びしろは大きくなりやすいので、理に適っているのです。

これには、どんな投資家が集まるのかも、関係しています。時価総額の大きい会社の株は、投資の上級者が買っているのです。

一方で、時価総額が100億円未満の株は、個人投資家しか買っていないと思っていいです。言い方は悪いですが、個人投資家には不勉強で判断もいい加減な人が多い、つまり投資の初心者が集まってきます。

株の基本は、ライバルが目をつけていないうちに株価が上がりそうな銘柄を買って、ライバルが目をつけて値上がりした頃に売るのが基本となるため、ライバルが弱いほうが株で儲けることができるのです。

野球で例えてみましょう。すごく当たり前ですが、野球の初心者がいきなり大リーグを目指しても無理があります。

株の世界も同じで、最初は「草野球=時価総額の小さな会社が集まる市場=ライバルの投資家が弱い市場」で、コツコツと経験と実績を積むことが大切なのです。

一方で大リーグとは、時価総額の大きい企業が集まる株式市場。日本の株式市場でいえば、東証1部の中の、さらに上位が集まる舞台というイメージです。ここに出入りするライバルの投資家は、強敵ぞろいです。

一方で草野球では、東証マザーズ、ジャスダックなど上場基準が緩やかな市場に集まる企業が多くなります。東証1部上場の企業もありますが、時価総額がそこまで大きくなければ、草野球に属すとしています。

ですから逆に、東証マザーズでありながら時価総額が大きかったりすれば大リーグに属すとします。

時価総額とは、「株式時価総額」のことです。その会社の株価に発行済み株式の総数をかけたもので、『Yahoo!ファイナンス』などの株価情報に必ず載っています。その会社の価値といってもいいかもしれません。その時価総額が30億円、50億円くらいの会社は、成長軌道に乗るとすぐに100億円、300億円になります。

この伸びしろの大きい時期に仕入れて、会社の成長と共に利益を得るのが賢い投資術です。

強敵の機関投資家は時価総額の小さい株が買いたくても買えない

ズボラでも儲け続ける方法
(画像=This Is Me/ShutterStock)

ではなぜ、100億円未満には強敵が集まらないのか。強敵とは主に、機関投資家や外国人投資家を指します。投資信託などを運営するファンドと呼ばれる機関、銀行、生命保険会社、年金などの大量の資金を持つ大口投資家を機関投資家といいますが、彼らには投資先に対する厳しい規定があることによります。

時価総額が100億円以下の小型株には投資できない決まりを守らねばならない機関投資家がほとんどです。たまにベンチャー企業に投資するところもありますが、例外といってもいいでしょう。

このような決まりがあるのには、いくつか理由があります。

まずは実際問題として、大きなお金を動かさないといけない機関投資家は、小型株では投資できる金額に限界があるのが理由の1つです。時価総額の小さい銘柄だと、多額の金額で買うと、自らの買い注文で株価が上昇してしまいます。また、売ろうとすると、自らの売り注文で株価を下落させてしまうのです。しかも、運営金額が数千億円以上あるファンドになってくると、1億円、2億円の投資では、機関投資家は自分のパフォーマンスが上がらないので、投資自体をしません。

時価総額300億円、500億円クラスの企業に対しては、機関投資家によっては「ユニバース(投資範囲)」という銘柄候補があって、その中からしか買ってはいけない決まりになっていることすらあります。

時価総額や流動性にも基準が設けられていて、過去に決算処理の虚偽をして罰則を受けた企業に対しては、購入禁止期間が決まっていることも。どんなに「いい会社だ、今後成長するだろう」と思っても、立場上、買えないわけです。

また、「5%ルール」も大いに関係しています。例えば時価総額億円の会社だったら、時価総額の5%となる2億5千万円をその会社に投資すると「5%ルール」というルールが適用されてしまい、内閣総理大臣宛に「大量保有報告書」を提出する義務が発生します。金融庁のサイトの「EDINET」というページで発表されますので「あの投資家、A社の株買ったよ!」と他の投資家にバレちゃうわけです。

さらに、5%以上の株主になったら、その株を1%以上売買した際は、その都度「変更報告書」で報告する義務があります。投資で、面倒なことがずっと続いちゃうわけです。

・金融庁「EDINET

ではなぜ、株の売り買いがバレると困るのか?1つ例を出しましょう。

任天堂の大株主が株を売却したというのが、5%ルールで世間にバレてしまいました。そこで、「何か事情があったのでは?」と疑心暗鬼になった投資家がどんどん売り、売りが売りを誘って、業績は好調なのに株価は上がらなくなってしまったということがあったのです。

時価総額が小さい株もやがては機関投資家が高く買ってくれる

この制約がある環境下でも、小さい会社が成長して時価総額が大きくなってきたら、買える人が増えてきます。

つまり、個人投資家が応援して、株価を上げてあげれば時価総額が増え、機関投資家が買ってくれるような株になります。そうなると、保有株数が機関投資家に比べたらはるかに少ない個人投資家が売っても、もう株価は下がりません。

株は、買い手が多ければ上がるし、売り手が多ければ下がります。自分が売りたい時に買う人が誰もいなければ、取引ができません。自分が売りたい際に、投資先の時価総額が上がって機関投資家が参入してくれれば、彼らに渡してしまえばいいことになります。そうすれば、自分の持ち株は売れるし、株価が下がらずに売れます。

個人投資家が大きなリターンを狙う場合は、時価総額100億円から大きくても300億円くらいの会社が1000億円になる局面が一番変化率も高いため、儲かります。時価総額が大きくなると、今度は買える人が増えて、売りやすい環境になります。「株式投資で儲けるには、時価総額が小さい会社を狙いましょう。なぜなら株価が化ける(大きく上がる)可能性が高いから」とお話ししました。

投資家の属性は、会社の規模によって買える人が限定されます。一番小さい規模の会社を買えるのは、個人投資家だけです。その次に小規模な会社だと小型株ファンドなどが参戦可能になり、もっと大きな会社になると機関投資家も参入できるようになります。

株価が上がり、時価総額が増えるにつれて買う人が増え、さらに株価が上がる好循環になるわけです。

機関投資家、それから日本の株式市場に出入りする外国人投資家は、もともと予算を何兆円も持っていて投資しなければならないので、条件がそろえば買ってきます。

ゆっくり運用する年金基金もあれば、ヘッジファンドといわれるリスキーな売買をする投資家もいます。

最大規模の機関投資家は、カルパース(カルフォルニア州職員退職年金基金)や日本のGPIFなど。規模・資金ともに巨大です。なお、GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人のことで、日本の厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っています。

アナリストがフォローしない銘柄こそ個人投資家は狙いを定めるべし

アナリストレポートをご存知ですか?投資や企業評価の専門家という資格を持つ証券アナリストと呼ばれる人たちがいるのですが(私もその1人です)、証券アナリストは、会社の外部からいろいろな角度でデータを駆使して、自分で業績予想を出します。このレポートがアナリストレポートです。

日本の上場企業の中で、アナリストがフォローしていてレポートが出ているところは、上位500~700社しかありません。上場企業は約3700社ほどなので、アナリストレポートがある会社は全体の上位約2割程度です。

よってアナリストは、主に上位企業の銘柄を相手にする機関投資家向けに、分析結果を開示していることになります。そして実際に、機関投資家はアナリストレポートを貴重な資料として重宝しています。

つまり言い方を変えると、残りの約8割の会社にはアナリストレポートの需要自体がないことになりますし、機関投資家が手を出しにくい銘柄となります。

先ほど、「機関投資家が手を出さない銘柄を買いましょう」とお伝えしましたよね。つまり、このアナリストレポートがない銘柄、これこそが個人投資家が狙うべきお宝銘柄となるのです。

まとめますと、お宝株は、アナリストがフォローしていない、これから注目を集めそうな銘柄で、時価総額が小さいものとなります。

では、どうやってアナリストがフォローしていない銘柄かどうかを確認するのでしょうか。簡単に手順を紹介しましょう。

例えば、SBI証券の場合を見てみます。上場企業固有の証券コードで企業情報を呼び出し、業績をクリックした際に「コンセンサス予想 経常利益」に数字があると、アナリストがフォローしている銘柄になります。数字がなければ、フォローされていない銘柄となります。ぜひ、フォローされていない銘柄を狙いましょう。

時価総額が小さい銘柄でも、東証1部に上場してしまっているものもあります。東証1部は、ハードルが低くなって、時価総額億円でも上場できるので、現在2000社以上が所属しています。その中の大リーグ銘柄は、アナリストがついている企業です。

上位500社から700社が大リーグでして、東証1部でも実は半分以上がマイナーリーグ、草野球のようなものです。逆に、マザーズやジャスダックでもアナリストがフォローしている銘柄がありますので、アナリストがいない銘柄=草野球所属を探すことが大切です。

小さな市場で大きなシェアを持つ会社がよい

大きな市場で大きなシェアを持っている会社は、安定的に収益をあげるので、投資しても安心でしょう。例えば、世界最大のロボットメーカー、ファナックのような企業です。

しかし、どう考えても大きな会社はほとんどが大リーグ所属ですので、個人投資家には向きません。

そこで個人投資家が狙うべきは、まずは小さな市場で大きなシェアを持っている会社。そこからスタートして儲かっていくと、その株が育ち=株価が上がり、大きなマーケットに出ていくことができるようになり、機関投資家が高く買ってくれますから。

さらに、その市場自体が今後拡大することが見込まれる、そのことが大事です。

例えば、今の日本は高齢者の数がとても多いですから、葬儀関連ビジネスは増えて市場が拡大することに異論はないでしょう。その葬儀業界の中でも大きなシェアを持つ会社は、さらにオススメとなります。

逆に言うと、人が生まれる産業は衰退産業になってしまいます。少子高齢化で出産が減っていくからです。例えば以上のような手順で考えて、日本の中で伸びる市場を捕まえましょう。

また、団塊世代が後期高齢者「75歳以上」に入ってきたことで、介護もそうですが、温泉もシニアにお風呂好きが多いことから伸びています。シニア関連マーケットは、当分の間は成長が続くのではないかと思います。

意外に成長!市場が衰退するのに成長する銘柄とは?

ただ、先ほどとは逆のことを申し上げてしまいますが、今後伸びにくい市場でもオススメの場合があります。企業の成長シナリオには「伸びない市場でもいい。シェアを伸ばせれば」という考え方があるからです。シェアを伸ばすことで、売り上げも増やすことができるのです。

例えば、パチンコ・パチスロの市場は伸びていません。お客さんがだんだん減っているので、現在パチンコ・パチスロの会社は社ほどあるのですが、毎年数社が倒産しています。

このパチンコ・パチスロの市場には上場企業が5社ほどあり、それ以外の会社は未上場です。すると、どっちが淘汰されていくかというと、未上場企業から撤退していきます。体力・資力共に上場企業には勝てないからです。

そうすると、パチンコ・パチスロ全体の市場は小さくなってきますが、残された企業は“シェアアップ”によって売上高が上がっていくことがあるのです。

さらに、衰退産業のよいところは、新規参入がほとんどないことです。新たなライバルは現れないので、伸びないマーケットでもシェアアップだけで十分儲かっていきます。

ですから、未上場の小さい会社がひしめき合っているようなマーケットは、まだまだいけるといえるでしょう。大きい会社はより大きくなって、小さい会社のマーケットをもらうという、意外に儲かる“残り物には福がある”パターンです。

衰退産業の儲かる例として、他にはDVD流通業もあります。

DVD卸のハピネットは、バンダイナムコグループの玩具卸の会社で、DVD卸では最大手です。今まではDVDはよく売れたので、それぞれの企業が自社で流通も扱っていました。ところが、最近はどうやってもDVDが売れなくなってしまった。

そうすると、自社で流通をやるのがしんどくなって、多くの会社が流通をハピネットに任せるようになりました。ハピネットに皆が頼むので、一定のDVDの需要を担って、意外に儲かる堅い収益モデルになっています。

一方で、上場企業ばかりが占めているような業界は、個人投資家が手を出すのは厳しくなります。

例えばビール業界。競争しているビール会社のうち、上場していないのはオリオンビールくらいですから。地ビール会社は規模が小さく、それぞれの地元でやっているため、競争に参入しているとはいえませんので、そのように考えられます。

「国策に売りナシ」「モノ消費から、コト消費へ」

意外な成長市場といえば、保育事業もあります。日本は少子化ですが、“一億総活躍プラン”で女性の社会進出が奨励され、保育園が足りないと社会問題にまでなっています。まだまだ新規参入してくる企業が多いと思います。

国の政策に沿ったビジネスモデルは、補助金が出たり、用地取得に優先順位が与えられたりして、順調に成長軌道に乗る場合が多いのです。株の世界には「国策に売りナシ」という格言もあるくらいです。この格言の意味は「国が行おうとしている政策によって追い風を受ける会社の株は買うべし」でして、国策があればそれくらい有利に経営が進められます。

観光事業も国策の影響を受けています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人観光客向けの“おもてなし”などのインバウンド消費がよく話題になりますが、政府が観光政策にも力を入れているからです。その影響で、外国人向けだけでなく日本人にも好評な国内クルーズなども活況を呈しています。

シニア消費と絡めて、ちょっとリッチなシニアの国内・アジア周遊などのクルーズも増えていくのではないかと睨んでいます。クルーズ関連を手掛ける旅行会社も有望かもしれません。

世の中のトレンドが「モノ消費から、コト消費へ」移ってきているとはよくいわれますが、観光事業こそ「コト消費」になりますし、プラス「国策便乗」していると考えられます。

国策という話とは別になりますが、「モノ消費から、コト消費へ」という流れで言いますと、コンサートやイベントを手掛ける企業も期待ができそうです。

藤本誠之(ふじもと・のぶゆき)
証券アナリスト。1965年生まれ。関西大学工学部卒。Yahoo!ファイナンス株価予想2012年勝率1位、伝説の39連勝を成し遂げた証券アナリスト。“相場の福の神”の愛称で親しまれており、「まいど!」のあいさつ・独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIなどのレギュラー出演をはじめ、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト、Allabout株式ガイドを務める。


Source: 株式投資
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