【週間マーケット展望】日米政治の混迷 ポジションを傾けにくい局面
【週間マーケット展望】日米政治の混迷 ポジションを傾けにくい局面
先週の日経平均は2週連続の上昇となり、3月5日につけた「VIXショック」による2番底からの戻りを試す展開だった。もっとも、完全に底入れ感が出たとは言いにくい。15日の東証1部の売買代金は2兆2350億円と今年最低となり、週間を通じての商いも陰の極だった。
市場の底入れ時は売買代金が膨らむことが多くなるが、今の売買代金では市場参加者は模様眺めをしている状況だろう。薄商いの中、ヘッジファンドなどの先物の売買で日経平均が上下している状態だ。
ドル円は株価や米長期金利の動向を見ながらの動きになっている。米国株が戻り歩調であり、金利上昇も2.8%台で落ちついているため、円高トレンドは一服しているが、106円を中心とした膠着相場から抜け出せない。
今週は20〜21日に注目の米FOMCが開催される。FF金利誘導目標を25BPS利上げして1.50〜1.75%にすることが市場のコンセンサスとなっている。パウエル議長になって初めてのFOMCであり、新しいメンバーによるドッドチャート(金利見通し)やパウエル議長の記者会見に注目が集まる。
タカ派的な見通しやコメントが出た場合は、金利上昇、株価下落、円高になる可能性にも注意しておいた方がいいだろう。 また、米輸入関税に対する報復措置やロシアゲート疑惑の発展次第では世界的にリスクオフとなる可能性も大きい。
国内の森友文書問題では、佐川前国税庁長官の証人喚問が19日以降に行われる見込み。野党は安倍昭恵氏の証人喚問も求めている。週末の時事通信の世論調査では内閣支持率が9.4ポイント下がり39.3%となった。不支持率は8.4ポイント上昇し、40.4%と支持率を上回った。各種メディアの調査でも麻生財務相の辞任を予想する向きが増えている。政局が混迷するようだと、有事の円高、株安の再燃もありえるだけに、ポジションを傾けにくい局面だ。
週間株式展望 しばらくは海外要因で上下する状況が続くだろう
今週(3/19〜3/23)の日経平均は2万1500円から2万2000円のレンジを想定している。国会喚問の行方、21日のFOMC、日本の祝日を控え、週初は狭いレンジでの商いとなりそうだ。テクニカル的にも日経平均は短期的なトレンドである5日移動平均線(16日で2万1809円)を下回ってはいるが、かろうじて中期のサポートラインである25日移動平均線(同2万1670円)は上回っている。材料次第ではどちらに抜けてもおかしくない位置にある。
先週(3/12〜3/16)の日経平均は2週続伸、週間で207円31銭(1.0%)高の2万1676円51銭で引けた。1月23日高値から3月5日安値までの下げ幅3192円に対し16日引けで2割程度戻したに過ぎない。米国市場でNYダウが約5割戻し、ナスダック総合指数が3月13日に過去最高値をいち早く奪回したのに比べると日本株の戻りの鈍さが目立っている。日本株の戻りが悪いのは円高の影響が大きい。法人企業統計や鉱工業生産などがスローダウンし始めているため、円高がさらに続くようだと日本企業の1〜3月が減益になる可能性が指摘されている。
日経平均の先週の高値は12日の2万2971円、安値は15日の2万1555円であり、金曜日に安値をつけただけに週間の引け味は良くない。
9日の米雇用統計で平均時給の伸びが鈍化したことでNY為替市場では一時107円05銭と3月1日以来の107円台を回復した。米輸入制限に関しても、カナダとメキシコを外し、日本など同盟国についても適用除外に拡大するとの報道があったため、NYダウはリスクオンで440ドル高と大きく上げた。
日本株も週初12日にはギャップアップして始まった。トランプ大統領が米朝首脳会談を受諾したとの報道で東京市場のドル円は106円97銭と円安に振れて株価を押し上げた。ただ、日経平均2万2000円手前では利益確定の売りが拡がり、高値からは一時280円ほど下げた。結局12日は、日経平均3連騰で陰線ながらも354円高で、1月29日以来の25日移動平均線を上抜けとなった。
日経平均は夜間上げ、日中下げるパターンが多くなっている。海外ヘッジファンドが東京市場で先物の売りを入れていること、国内機関投資家が決算対策の売りを出していることが主因と考えられる。 国内機関投資家の売りは先週で一段落したと思うが、実質新年度入りまでは動きにくいだろう。
重苦しい相場が一転したのは13日。米国株式市場でハイテク株比率の高いナスダック指数が最高値を更新したことで、日経平均は4連騰の144円高。久しぶりに長めの陽線となり、日中に買いが入った。14日には、5日移動平均線が25日移動平均線を上回るミニゴールデンクロスが示現し、相場の底打ちムードも高まった。ただそれも継続せず、16日の127円安で日経平均は5日移動平均線を3月7日以来に下抜けてしまった。しばらくは、海外要因で上下する状況が続きそうだ。
週間為替展望 日米政治の混迷、動向には注意
今週(3/19〜3/23)のドル円相場は105円25銭から107円のレンジを想定している。 基本的には米国株式相場、米長期債利回りを見ながら、106円を中心とした膠着相場が続くと見ている。
FOMCではFRBが利上げを行うことはほぼ間違いなさそうだ。パウエル議長は基本的にはイエレン前議長の流れを踏襲すると見られている。21日に利上げ後、あと年内2回がメインシナリオだろう。
先週(3/12〜3/16)の東京市場でのドル円は反騰、週間では1円04銭円高となった。9日の雇用統計でNY市場では107円05銭と3月1日以来の107円台をつけたが、東京市場のドルの週間の高値は13日の106円99銭で107円台はなかった。週間安値は16日の105円65銭だった。14日以降ドルは東京市場では3連騰している。
16日の円高は日米政局懸念だった。10時ごろにマクマスター米大統領補佐官の解任報道が伝わった。コーンNEC委員長辞任、ティラーソン国務長官と立て続けなだけに、今後のトランプ政権に対する不安が拡がった。米財務省は15日、ロシアによる16年の大統領選に関する干渉したとして5団体と19個人を制裁対象に指定した。ロシアゲート事件も再燃する可能性が出て来ている。
日本でも森友文書問題の追及が国会で荒れている。与党は佐川前国税庁長官の証人喚問を承認せざるを得ない状況となった。 日米の政治の混迷が続くようならば3月2日につけた105円25銭に向けて円高トレンドが再現される可能性もストーリーに入れておいた方がよさそうだ。
今週のイベント・経済指標
18日 ロシア大統領選
皇太子様ブラジルご訪問
19日 森友文書国会審議
G20財務省・中銀総裁会議(〜20日)
日銀3月の金融決定会合「主な意見」
日本貿易統計
20日 米FOMC(〜21日)
日本景気動向指数改定値
日本コンビニ売上
訪日外国人数
中国全人代閉幕
独ZEW景況感指数
21日 日本秋分の日祝日
FRBパウエル議長会見
日ロ外相会談
米経常収支
米中古住宅販売件数
22日 日本全国スーパー売上高、全国百貨店売上高
日本粗鋼生産
英中銀政策委員会
EU首脳会議
コインチェックなど仮想通貨交換業者7社の業務改善計画の提出期限
独PMI、ユーロ圏PMI
独IFO企業景況感指数
23日 米鉄鋼・アルミ輸入制限発動
米連邦政府つなぎ予算期限
日本CPI
米耐久財受注
米新築住宅販売
平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。
Source: 株式投資