経営者必見!「逓増定期保険」で節税する時のメリット・デメリット

経営者必見!「逓増定期保険」で節税する時のメリット・デメリット

法人保険で節税するという話はよく聞かれます。しかし、その仕組みについては計算技術的な面が多いため、まだまだ周知されているとはいえません。以下では、法人保険の中でも節税商品として注目されることがある逓増定期保険の仕組みとメリット、デメリットについて解説していきます。

逓増定期保険とは?

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(写真=PIXTA)

逓増定期保険は、保険期間が経過するに従って保険金額が増えていくタイプの保険を指します。法人保険として利用する場合には、役員などを被保険者として、会社が受取人となるのが一般的です。

定期保険は、保険期間が満了したときに満期保険金などが受け取れない「掛け捨て」の保険を意味します。定期保険には満期保険金はありません。

ただし、保険期間中に途中解約すれば解約返戻金が戻ってくる場合があります。保険料を税務上の損金として処理できる一方で、支払った保険料のほとんどが解約返戻金として戻ってくる性質を利用して、節税商品として活用されているのが現状です。

●損金計上の3つのタイプ

そこで気になるのは、保険料のうち、どの程度の金額が税務上の損金として処理できるかです。これについては国税庁の「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」という法令解釈通達に記載があります。

通達では逓増定期保険を「保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち、その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの」としています。

その上で、要件に応じて保険料の1/2を損金(1/2は資産)、1/3を損金(2/3は資産)、1/4を損金(3/4は資産)として計上する3つのタイプに区分しています。

●典型的な逓増定期保険

商品化されている逓増定期保険で典型的なものは、保険金額が、保険期間の後半で階段を駆け上るように5倍まで急増するタイプです。一方で、解約返戻金は5年から10年の期間でピークの80%~90%台を迎えるよう山なりに設計されています。

保険期間の終了が近くなると解約返戻率はほとんどなくなり、満期時には解約返戻金も満期保険金も受け取れなくなります。

気になる逓増定期保険のメリット

それでは逓増定期保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

●一定期間を経過すると保険金が増える

被保険者が年齢を重ねるごとに保険金の額が増えていくため、死亡率が高くなるとともに経営にとっても不可欠な存在となっている役員に、万が一のことがあった場合の会社に対する保障という面で優れています。ただし、実務上は保険金の額が大きく増える前に解約するのが一般的です。

●保険料の一定割合が損金になる

損金の割合では1/2のタイプが多く見られます。厳密には、保険期間の前半6割では毎月の保険料の1/2を損金、残りの1/2を資産として計上します。そして、保険期間の後半4割では毎月の保険料の全額を損金に計上するとともに、前半に資産として累積されている金額も後半4割の期間にわたり取り崩して損金にすることができます。

つまり、保険期間全体で見ると、保険料の全額が損金に算入できることになります。ただし、通常は保険期間の後半まで契約を継続していることはないため、1/2が損金となる保険といわれます。

●退職金や他の事業の準備金に充てられる

解約返戻金を、退職金や設備投資などの原資として利用することが可能です。また、解約返戻金が戻ってきた時点では税務上の益金が発生するため、退職金を支給することで発生する損金と相殺して、税務上の所得をコントロールすることもできます。

●解約する時期によっては解約返戻金の返戻率が高くなる

保険契約から5年から10年の間に解約返戻金がもっとも高くなるように設計されている商品が一般的です。返戻率は90%台後半になる商品もあります。そのため、一番返戻率が高くなるタイミングで解約できるよう、退職金などの支給時期を検討することが有用です。

●契約者貸付制度を使える

保険期間中、急な資金が必要となった場合に、解約返戻金の範囲内で融資が受けられる契約者貸付制度が利用できます。審査なしで比較的迅速に融資が受けられるので、資金繰りの強い味方となります。

●契約名義の変更ができる

保険契約を法人名義から役員などの個人名義に変更することができます。保険契約に関する権利を譲渡することになるので、役員から対価を受け取らないと役員の給与所得とされる可能性があります。その際の譲渡価額は、名義変更時の解約返戻金の額とされます(所得税基本通達36-37)。

なお、譲渡価額を低く抑えられる保険商品として「低解約返戻金型逓増定期保険」があります。これは解約返戻率が途中から急増するタイプです。急増する直前で名義変更することにより、低い価額で譲渡した後に、役員は多額の解約返戻金を受け取れるというメリットがあります。ただし、実質的な価額で譲渡していない点で、租税回避行為と認定されるリスクがないとは言い切れません。

逓増定期保険のデメリットの説明

一方で、逓増定期保険にはデメリットもあります。メリットとデメリットをよく確認しておきましょう。

●キャッシュフローが固定される

実際に保険料の支払いが生じるため、キャッシュフローが固定されるという点ではデメリットがあります。また、毎期の保険料が費用計上されるため、利益水準が低い場合は赤字の原因となる可能性もあります。したがって、資金繰りや決算に与える影響については注意を払う必要があります。

・解約返戻率のピーク時が限定されている

解約返戻率のピーク時に解約しないと、収支のマイナスが大きくなる可能性があります。一般的に節税商品と呼ばれる逓増定期保険ですが、実際には課税を先送りしているだけですので、解約返戻金が低くなるほど損失が拡大します。

●解約すれば保障がなくなる

保険を解約した時点で、残りの保険期間については保障の対象外となります。したがって、保障を重視するのであれば、解約を前提とした逓増定期保険ではなく、通常の定期保険なども検討すべきです。

逓増定期保険を効果的に活用

逓増定期保険は、損金計上を先取りしながら将来の支出に備えるとともに、支出時の損益や税額をコントロールできる点で使い勝手の良い商品です。リスクを理解した上で節税対策を入念に行うことが、活用の秘訣といえるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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Source: 株式投資
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