マンションは購入すべきか賃貸がいいのか メリットとシミュレーションから考える

マンションは購入すべきか賃貸がいいのか メリットとシミュレーションから考える

同じ物件に住み続ける場合、マンションは賃貸で住むべきか購入して住むべきか。総コストや「資産」として保有する価値をどれだけ重視するかも判断基準になるが、自分のライフスタイルに合わせて決めることも非常に重要になってくる。

購入のメリット:減税措置もあり「資産」も残る

マイホーム,賃貸か購入か
(画像=PIXTA)

まずマンションを購入した場合のメリットについて考えてみる。マンションを購入した場合、賃貸するケースと最も異なる点は、本人の「資産」になるという点だ。購入した住宅が資産価値を持っている場合、その後の不動産価格の変化にもよるが、売却によるキャピタルゲイン(値上がり益)を得られる可能性がある。

また、購入した本人が自分や家族好みに改装しやすいという点も購入の大きなメリットだ。例えば、賃貸では壁に画びょうを刺すといったことは賃貸ではしにくいが、購入の場合は基本的には自己責任の下で行える。また子供のいる家庭では、その成長を柱に刻んでいったり、成長に合わせて壁紙を変えたりと、柔軟性のある住み方ができることもマンション購入のメリットだ。

マンションを購入する場合は、住宅ローン減税制度の適用対象になることも大きい。2014年からの措置として、住宅ローン残高の1%が所得税から10年間控除されるなどの恩恵を受けることができる。さらに、老後の住居が既に確保されているという安心感もある。

購入のデメリット:住宅ローンはリスクにもなり得る

一方でマンション購入にはデメリットもある。住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、収入が減ってもローンの支払いは続けないといけないことだ。

失業や転職、減給などで給与が無くなったり減ったりすると、当初計画していた支払いスケジュールを続けていくのが難しくなってくる。また金利変動型の住宅ローンを組んでいる場合は、金利上昇によってトータルの返済額が増える可能性も出てくる。また、固定資産税などの税金を支払わないといけないことも大きい。固定資産税はマンションを購入して保有している期間はずっと支払わなければならない。

また一度マンションを購入すると、賃貸の場合より引っ越ししにくくなる点も覚えておきたい。賃貸の場合、転勤などに伴う、一家での引っ越しに対するハードルは決して高くないが、一度不動産を抱えてしまうと引っ越したあとの運用などを視野に考えないといけなくなる。手軽に引っ越しできないのがマンション購入の注意点であると言えるだろう。

賃貸のメリット:何より引っ越しがしやすい

続いてマンションを賃貸するケースについて考えてみる。マンション賃貸のメリットは、年収や家族形態、職場といったライフスタイルの変化に合わせて柔軟に住まいを変えることができるという点だ。特に年収の変化によって住宅コストを変えられるという点は大きい。

また家族形態や生活スタイルの変化にもフレキシブルに対応できる。例えば単身時代の場合は狭めの1Rや1LDK、結婚して子供ができた場合は2LDK〜4LDKクラス、子供が独立して夫婦だけになった場合はもう少し狭めの家に引っ越すこともできる。転勤で県外に引っ越す場合も、配偶者や家族で一緒に引っ越すという選択肢も選びやすくなる。

賃貸するメリットはほかにもある。敷金や礼金、仲介手数料などは最初の契約時に発生するものの、マンション購入の際に支払う頭金など、まとまったお金がかからないことだ。固定資産税なども賃貸のケースでは負担しなくても良い。

賃貸のデメリット:賃料は「掛け捨て」で資産にならない

メリットが多いようにも感じる賃貸。ではマンションを賃貸する場合のデメリットにはどんなことが挙げられるか。大きなデメリットと呼べる一つでもあるのは、賃貸料を支払い続けても、住んでいる住居は最終的には自分に資産にはならないということだ。賃料はいわば「掛け捨て」となり、当然長く住んでもキャピタルゲインなどによる利益を得られる訳ではない。

またマンションを購入した場合、住宅ローンを支払い終わったあとは住宅コストが一気に下がるが、賃貸の場合はそこに住み続ける限り賃貸料を住宅のオーナーに支払い続けなければならない。また所有者の意向でマンションが取り壊しになる場合などは、自分の意思に反して引っ越しをしなければならないこともある。

住んでいる賃貸マンションの部屋の改装も基本的にはできないこともデメリットの一つであると言える。動物をペットとして飼う場合にもさまざまな配慮が必要であることは言うまでもない。

現在と将来のライフスタイルを判断材料に

このように、マンションの賃貸と購入ではそれぞれにメリットとデメリットがあり、賃貸も購入も一長一短であると言える。そのため本人のライフスタイルに合わせてどちらを選ぶかも重要になってくる。

将来的に同じ場所にずっと住みたいのか、それとも日本国内のほかの地域、さらには海外にも住んでみたいのか。地元の役場など転勤が近郊に限られる職場なのか、全国に拠点があり転勤がある企業に勤めているのか、フリーランスとして仕事をしているのか。さらには、気が変わりやすい人なのか、そうでないのか。まず自分のことや自分が置かれた環境について理解することも賃貸と購入のどちらかを選ぶかを考える上で重要なファクターとなってくる。

ここまで賃貸と購入のメリットとデメリットを考えてきた。加えて、実際に購入と賃貸でかかる総コストを中長期で比較することも重要だ。

購入して35年間住んだ場合の総コスト

例えばAさんが3000万円の物件を頭金500万円、住宅ローンで2500万円を借り入れて購入したとする。

まず35年間でどれくらいのコストがかかるか計算してみる。35年返済の住宅ローンを組んで金利が2.1%だった場合、住宅ローンの総支払額は約3523万円となる。印紙料などの契約時にかかるさまざまな諸経費が100万円、35年間の管理費・修繕積立金の総額が900万円、固定資産税・都市計画税が700万円だったとする。その場合、頭金を入れて35年間でかかる合計費用は5723万円となる。

住宅ローン減税では借入金の年末における残高の1%が10年間にわたって所得控除される。その所得控除による総減税額を200万円とすると最終的に支払う費用は5523万円となり、1年間平均だと約160万円、1カ月平均だと約13万となる。Aさんは35年がたった時点で住宅ローンが払い終わり、その後の住宅コストは一気に下がる。

賃貸で35年間住んだ場合の総コスト

続いて、Aさんが毎月支払うローン返済額と同等の額を、月々の家賃として支払うBさんのケースについて考える。

Bさんは家賃が月額13万円のマンションを賃貸した。賃貸契約をしたときに敷金・礼金がそれぞれ1カ月分発生し、仲介手数料としても不動産屋に家賃1カ月分を支払った。またそのほかに、物件更新料として家賃1カ月分を2年に1度支払い続けた。

この場合は、35年間の家賃の総額が5460万円で更新手数料の総額が227.5万円(家賃17.5カ月分)、最初に支払った敷金と礼金、仲介手数料の合計が65万円(家賃5カ月分)となり、全てを合計すると5752.5万円となる。1年間平均では約164万円、月平均では約13万6000円となる。

長く住むことを考えると購入がお得に?

今回は月々の支払額を同額に設定し、35年間住んだ場合のそれぞれに特有な諸費用も含めた総コストを比較した。その結果、賃貸のほうがやや高い金額が出たものの、そこまでの差異は見られなかった。しかし、45〜50年と長いスパンで見ることで双方の総コストは大きく異なってくる。

物件を購入したAさんは住宅ローンを35年がたった時点で払い終えており、その後かかるコストが管理費や修繕積立金、固定資産税などの税金に限られてくる。一方でBさんは家賃をずっと払い続けなければならない。購入物件の場合は経年劣化による修繕費がある程度まとまって必要になることを考えても、総コストは長く住めば住むほど購入マンションのほうが安くなる。

さらに、マンションを購入したAさんはその物件を「資産」として保有していることになる。総コストが賃貸より低くなるだけではなく、この資産を保有しているという価値も大きい。

新築マンションか中古マンションか?

ここまでマンションを購入するか賃貸するかについて比較してきたが、実際に物件を購入する際には新築マンションか中古マンションか、価格帯はいくらくらいのマンションにするかなど、物件を選ぶ上ではさまざまなポイントがある。

例えば新築マンションを購入する場合は、オートロックや監視カメラなどの最新設備を有している物件が多いことや室内設備をオプションで選べることができること、購入費用に占める諸費用の割合が小さいこと、新築から住むという気持ちの良さなどのメリットがある。

一方で中古マンションに比べて価格は当然高めとなる。また部屋が完成する前に購入したケースでは実際の部屋の日当たりや窓からの景色を確認することができないほか、実際に住んでいる人の評価もこれから形成されていくので、想定外の住みにくさに直面するかもしれない。

中古でマンションを購入する場合は、当然新築価格よりは物件の販売価格が安く、資産価値の下落幅も一般的に新築で買ったときよりは小さく抑えられることが多い。一方で購入の際には不動産仲介手数料などが必要になってくるため、購入価格に占める諸経費の割合が新築マンションを購入したときよりも大きくなる。

新築マンションとは違い、古い中古マンションだと設備的なセキュリティー面で課題があるケースも多い。一方で住民コミュニティーができあがっていると、住民による見守り活動で安全性が保たれているケースもある。

こうしたさまざまなポイントも踏まえながら、自らのライフスタイルに合わせた慎重な住まい探しが重要だろう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)


Source: 株式投資
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