遺産が少ないほど多い「相続トラブル」「実家とわずかな預貯金が遺産」は揉める典型例

遺産が少ないほど多い「相続トラブル」「実家とわずかな預貯金が遺産」は揉める典型例

(本記事は、黒田尚子氏の著書『親の介護は9割逃げよ』小学館2018年2月11日刊行、の中から一部を抜粋・編集しています)

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親の介護は9割逃げよ
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要注意!よくある相続トラブルの傾向と対策

親の介護は9割逃げよ
(画像=Jacob Lund/shutterstock.com)

セミナーや相談などで相続の話をすると、「うちには財産なんてないから、相続トラブルなんて関係ない」というような表情を浮かべる人が多い。しかし現実には遺産が少なければ少ないほど、限られた遺産を平等に分けようとしてもめてしまう。

実際、相続トラブルは急速に増えている。家庭裁判所に持ち込まれる相続関係の相談件数は、2012年には約17万5000件。この10年でおよそ2倍というペースだ。

もめやすい遺産分割の紛争を見ると、2011年は8015件のうち、遺産が5000万円以下が70%超、1000万円以下でも30%を占める結果となっている。相続トラブルは、富裕層特有の問題とは限らない。

相続トラブルになりやすい事例とは?

最も典型的なパターンは、実家の不動産とわずかな預貯金が遺産というケース。

一般的に、不動産は換金しにくく、公平に分割できないことが争いの原因になる。配偶者や長男など、実家を相続した人が、自宅不動産を相続した代わりに、他の相続人に代償金を支払う代償分割*の現金が用意できず、"争族"が起こりやすい。

また、不幸というのは続くもので、立て続けに家族が亡くなることもある。たとえば、先に父親が亡くなったときに「一次相続」、その後に母親が亡くなったときに「二次相続」が発生する。

トラブルが生じやすいのは、一次相続よりも二次相続だ。一次相続では、母親がすべて相続するケースが多く、「長年連れ添ったお母さんが相続するなら」ときょうだい間の不満も噴出しにくい。

ところが、二次相続になると、それぞれの配偶者の思惑も絡んできて、対立が表面化しやすい。

父親が遺言書などを残しているケースはあっても、母親が生前、一次相続のときに相続した財産について、どのように分けたいかという意思表示をしている場合は少ない。

一時相続の際の「配偶者の税額軽減**」などの優遇措置も受けられない。母親自身もある程度の財産を持っていれば、さらに各人の相続税負担は重くなる。

本来であれば、二次相続のことを考慮して一次相続の遺産分割を話し合うことが大切なのだが、お互いに意思疎通が図れていないと、無理な相談だろう。

その上、親が要介護状態にあったかどうかや、そのサポートを、相続人の誰がしていたかによっても、相続時の対立は悪化し、相続トラブルは深刻化する。

*代償分割……相続財産を相続人の間で分割せず、特定の相続人が特定の遺産を相続し、その代わりに、その者の財産を他の相続人に与える分割方法。

**配偶者の税額軽減……配偶者が相続した財産が、法定相続分までであれば相続税がかからず、法定相続分を超えて相続しても、1億6000万円までであれば相続税がかからない。

相続対策にはどのようなものがある?

このような相続トラブルを回避するための相続対策として、(1)争族対策(相続人間で争いが起きないようにする)、(2)納税資金対策(相続税を納めるお金を準備する)、(3)節税対策(税金を安くする)の3つがある。

ポイントとしては、まず、相続税がかからない場合と相続税がかかる場合に分けて考えてみること。

まず、相続税がかからずに、相続人が1人しかいなければ、相続対策の必要はとくにない。財産の保全や運用に努めておけばいいだろう。

そして相続税がかからなくても、相続人が複数いる場合、遺産分割を行うため①が必要だ。相続税がかかる場合は、(1)~(3)の対策をバランスよく行うことが重要である。

相続対策については、さまざまなノウハウ本や情報が提供されており、詳しい内容はそちらに譲りたい。そして、法律や制度の改正などで相続対策も変わることは多い。

たとえば、以前、節税対策として、故意に養子縁組をすることが流行った。極端なケースでは、子の配偶者や孫など10人を養子にしたり、相続の前日に手続きをしたりといった事例が横行したそうだ。

結局、やりすぎた租税回避の方法ということで、1988年の税制改正によって、法定相続人の数に含まれる「養子の数」には制限が設けられた(実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで)。

いずれにせよ、相続発生後はできることが限られている。実行するのであれば、弁護士や税理士など、専門家に相談しながら、早めに計画的に行うことをお勧めする。

黒田 尚子(くろだ・なおこ)
1969年富山県出身。千葉県在住。立命館大学法学部修了後、1992年(株)日本総合研究所に入社。在職中に、自己啓発の目的でFP資格を取得後に同社退社。1998年、独立系FPとして転身を図る。2010年1月、消費生活専門相談員資格を取得し、消費者問題にも注力。また、2009年12月の乳がん告知を受け、2011年3月に乳がん体験者コーディネーター資格を取得するなどがんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行う。


Source: 株式投資
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