富裕層やプロ投資家が好む「低コスト商品」、ETFとは? 過去10年で市場規模が5.8倍に

富裕層やプロ投資家が好む「低コスト商品」、ETFとは? 過去10年で市場規模が5.8倍に

ETFはここ10年で革命とも言える金融商品だろう。日本銀行が毎年6兆円をメドにETFを買っている事実があるが、日本の投資家には依然としてあまり馴染みがあるとは言えない。1000名以上が参加した国際会議で、ETFの世界的権威が「投資家がETFに投資する6つのメリット」を示した。

世界のETF市場は10年で約4兆ドル増加

富裕層,お金持ち
(画像=GaudiLab/shutterstock.com)

日本の個人投資家には必ずしも知名度が高いとは言えないETFだが、世界中の投資家はETFへの投資を拡大している。その市場規模は2008年末7160憶ドルであったものが、2017年末には4兆6610億ドルとなっており、10年で5.8倍にもなった。

欧米、アジアから1000名が集ったETFコンファレンス

2018年4月13日に都内ホテルで開催された第10回 ETF コンファレンスには日本の参加者だけでなく、米国、英国、フランスといった欧米、香港や台湾といったアジア各国からの参加者もあり、約1000名が参加した。朝9時前の主催者挨拶から始まり、19時まで続いたイベントプログラムのテーマは多岐にわたった。登壇者は世界的に著名な指数調査会社、ETFメーカーであるプロバイダー、調査会社・シンクタンク、ファンド運用者、金融庁、投資信託協会、経済研究所、金融機関、投資顧問会社、大学教授などで、アジア最大級のインターナショナルな会議となった。

そのコンファレンスでインタビュアー、パネリストとして3度にわたり登壇したETFの世界的権威のひとりである、Deborah Fuhr(デボラ・ファー)氏(ETFGI 共同創設者・パートナー)は世界の投資家が利用しているETFについて、6つのメリットを示した。単独インタビューを実施した筆者が日本の事例に当てはめて解説する。

1. 低コスト 販売手数料ゼロ、ケタ違いに低い保有コスト

日本で銀行や証券会社などで販売されている、一般的な投資信託を導入した場合、初年度のコストは約5%近くにもなるケースがある。例えば販売手数料3.24%、保有しているだけで保有財産から日割りで天引きされている信託報酬が1.62%(年率)といった具合だ。これに対してETFの場合では販売手数料はゼロ、信託報酬も一般の投信に比べて1%以上もコスト安のものも多く、中には0.04%(年率)といったケタ違いに低いものすら存在している。ただし、証券の売買手数料は必要である。頻繁に売買しようとする場合には手数料コストの有効性についても考える必要がある。

2. アクセス 取り扱い証券会社で購入可能

ETFは投資信託の中でも上場している投資信託である。国内に上場しているETFと海外市場に上場しているETF(海外ETF)に大別される。

証券会社などを通じて売買することができるが、販売手数料が低いため金融機関が提案するインセンティブは低く、日本国内での認知度が低くなっている一要因とも言えるだろう。また海外ETFについては証券会社によってその取扱いの商品数に開きがある。ETFは意外に身近にある金融商品なのだ。

3. 透明性 今の価格や何に投資しているのかがわかりやすい

ETFの多くはインデックス(=指標)に連動している。例えば日経平均株価が前日比1%上昇すれば、日経平均ETFの価格も約1%上昇するといった仕組みだ。

値動きが同じ方向性で、「何に投資しているか」といった投資対象がわかりやすい。開示された資料からETFの保有銘柄を投資家自身で知ることが可能だ。そしてETFの価格は海外であってもほぼリアルタイムに知ることができる。証券口座やウェブサイトを通じて知ることができるのだ。情報が大きく開示されており、全てとは言わないがETFは透明性が高いものが多い。

4.流動性と価格発見機能 売買のしやすさ、価格がすぐに公平に知らされる

一般的な投信を購入や解約をしようとする場合、「買う、売る」という指図をするにあたって「9800円で買いたい」「11000円で売りたい」と思っても、金額を指定した取引(指値)はできない。例えば株価が上がっており、午前中に「売り」を指図しても、午後に価格下落して思った価格にならず、結果「損して売った」ということも起こり得るのだ。

これに対してETFは、リアルタイムで価格がわかり、また指値での取引が可能だ。前例で価格が指値よりも下落していれば、ETFでは「約定せず」、売却が行われなくなるのだ。

そしてETFの価格はリアルタイムでスピーディに変化が反映され、正確に開示されている.(これは価格発見機能と呼ばれる)

5. 税金の効率性、公平性 〜投信では出来ない外国税額控除の利用

米国株に投資する国内籍の一般的な投信では、米国株からの配当は米国で課税(現地源泉税10%)されているが外国税額控除を利用することができない。米国に上場している米国籍のETFが、米国株式から配当を受け取ると米国同士で税金がかからない。結果的に投資家が外国税額控除を利用すると、一般の投信よりもメリットがある。(事前に税務・会計の専門家に確認の上ご対応下さい)

6. 洗練された使途 株式同様の柔軟な戦略が可能な場合も

ETFは市場に上場しているため、英国や米国などでは株式と同様の「貸し株」により金利を得ることができる場合や、信用取引を利用し、値段が下がった時に利益を目指すショート戦略など、一般の投信ではできない戦略を利用できる場合がある。日本では貸し株の制度を利用すると、配当金相当額は、雑所得または事業所得となり総合課税の対象となる見解が示されている。すると株式等の譲渡損とは損益通算ができなくなってしまうため、これを用いるかどうかは総合的な判断が必要となるだろう。

世界のプロや富裕層が活用するのはETF

世界では機関投資家、大学基金や年金基金などのプロはETFを活用している。ETFを活用することで運用コストは大幅に軽減できること、コストを減らすことで運用リターンが上昇する可能性に気付いて頂きたい。世界の富裕層は以前からETFのメリットに気付き、ETFをポートフォリオ運用に活用している。ETF市場がこれだけ拡大している背景として、ETFの大きなメリットがあることを日本の投資家にもっと知って欲しい。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPANおカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!』等がある。


Source: 株式投資
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