中国モバイルバンキング15億口座突破、全銀行リテールバンクを目指す?
中国モバイルバンキング15億口座突破、全銀行リテールバンクを目指す?
銀行の窓口業務は過去のものになりつつある。“無人銀行”という言葉は、将来を嘱望された選手の響きを持つ。FinTechが銀行を席捲しつつある。銀行は窓口を廃し、ネットバンク化、その先のモバイルバンキングへと進んでいる。そのエネルギーは途絶えることはない。経済サイト「毎日経済新聞」が最新のモバイルバンキングの動きを伝えた。中国の銀行は、モバイルのさらに先を見据えているのだろうか。
国有大手5行で全体の3分2
3月に発表された「2017年中国銀行業服務報告」を見ても、モバイル口座の伸びは著しい。2017年、中国モバイルバンキングの個人口座は15億200万に達し、前年比28.3%のプラス、法人口座は500万となり、57.5%のプラスだった。
各行の財務年報によると、2017年末、15億のモバイルバンキング口座中、9億は「工商」「農業」「中国」「建設」「交通」の上位5行で占めている。トップ3は、工商銀行2億8200万、前年比12.8%プラス、建設銀行2億6600万、19.3%プラス、農業銀行2億600万 21.9%のプラスだった。
最も伝統のある中国銀行は1億1500万、22.17%、交通銀行は昨年31回ものアプリ更新を行い、820項目の機能を強化した。その結果、モバイルバンキング口座は6106万、21.73%のプラスだった。
第二グループと地方銀行も
次に位置するのはは全国展開の“株式制商業銀行”のグループである。いずれもビジネス重視の特色ある経営を行っている。
招商銀行……中国最初の完全株式制の銀行。プライベートバンクとして富裕層の信頼厚い。
平安銀行……中国平安保険集団の商業銀行。平安保険集団は、現在最も元気な金融グループ。
光大銀行……中国光大集団に所属、同集団は国務院系、改革開放の“産物”とも呼ばれる。
中信銀行……中国中信集団に所属、ここも国務院系。海外金融市場への“参与”は最も早かった。
これら4行のモバイルバンキング口座は、招商……5579万、平安……4172万、光大……3535万、中信……2733万、いずれも30%以上伸びている。中でも平安銀行は60%近く伸ばしている。複数存在したアプリを統一してアップグレード、すべての商品とサービスを一括して扱えるようにした。
そして地方銀行もネット金融を最重要視している。例えば重慶農商行では、モバイルバンキングを農村地域に展開し、27.9%増の681万5800口座を獲得した。また江蘇省の常熟銀行では、モバイルバンキング口座を86%増やし、アクティブユーザーを2.2倍とした。
全銀行がリテールバンクを目指す?
中国最大の銀行、工商銀行は、“大”リテールバンク戦略の下、スマート化リテールバンクを追求した。そして年間を通じて3800万の個人口座“純増”という成果を挙げた。モバイルバンキングの月間アクティブユーザーも4000万を突破した。年間では1億に達した。
建設銀行もリテールバンクを最優先戦略に挙げている。モバイルバンキングは1000人の顧客に、1000種類の個性的なサービスを提供すると表明している。
招商銀行は、昨年モバイルを通じて、4兆4300億元にのぼる理財商品を販売した。全体の43.2%をモバイルで販売したことになる。
平安銀行は、新しいリスク管理機能の付いたお財布アプリの提供を始めた。そしてこのアプリの顧客は、1606万6000に達し、前年比304%も伸びた。そして平安銀行のリテール業務は、前年比57%増となり、総利益の70%を占めた。
どうやら中国では、大中小、すべての銀行がモバイルバンキングをテコにしてリテールバンクを目指しているようだ。しかし、以前のリテールバンクとは異なっている。かつては各支店など個々の拠点を中心とした自主経営で、効率は極めて低かった。現在はこうした分散管理から、インターネットの集中管理へ変わった。
つまり銀行支店は必要なくなり、モバイルアプリの性能や使い勝手が、今後の金融界を制することになる。ただしそうした表現も古すぎるのかもしれない。BATJをはじめとするIT大手など、あらゆるライバルと戦わなければならないからだ。
モバイル決済や個人金融商品の利便性では、IT大手に先行されている。戦える体制は整ったのだろうか。判断するにはまだ早急にすぎるようだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
Source: 株式投資