利回り「20%」超えの物件も見つかる?――不動産投資で「お宝」を見つける条件
利回り「20%」超えの物件も見つかる?――不動産投資で「お宝」を見つける条件
著者らが理事長や顧問を務める全国古家再生推進協議会には、空き家・古家への投資に興味を持った多くの投資家から連絡がきている。著者は「中には20%以上の利回りを出せる物件も」と話す。実際に投資を成功させている人たちの話から、お宝物件を見つけるヒントを得よう。
(本記事は、三木章裕・大熊重之の共書『儲かる!空き家・古家不動産投資入門』=フォレスト出版株式会社、2017年9月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【『空き家・古家の不動産投資』シリーズ】
(1)ボロボロな家ほど「買い」?空き家・古家投資が魅力的な理由
(2)利回り「20%」超えの物件も見つかる?――不動産投資で「お宝」を見つける条件
(3)1000万円の家賃収入を得たいならすぐ法人を設立せよ
何を基準にして物件購入を検討していくのか……大熊
私たち全古協では、物件の購入の際の価格を家賃から逆算します。
(相場家賃×12ヵ月÷利回り=物件総額)―リフォーム費用=購入額
ここであなたはお気づきになりましたか?
実はこの式には販売額がありません。
通常、売主がつけた販売価格があり、そこから値引きをしてもらうなど検討するものです。しかし、収益として考えるなら、その物件でどれくらいの儲けが出るのかがすべてです。であるならば、収益率が一番の購入数字になるはずです。
何でもかんでも安く叩けばいいものではありません。あなたが長く大家業をしたい、成長する大家になりたいと思うなら、不動産業者との良好なお付き合いは欠かせません。
しかし、私たちもビジネスです。私たちの試算に合っていれば売値で購入、収益が合わなければ価格を抑えてもらうしかありません。それには根拠のある数字を出すことが大切です。
何度も言います。
「安く叩いてやろう!とにかく安く買いたい」ではありません。
実際の購入する順序で解説しましょう。
不動産屋からくる物件資料には、「種目(不動産用語。マンション、戸建、土地、店舗、事務所など不動産の種類をいう。)、住所、価格、所在地、駅からの徒歩時間、土地面積、建物面積、築年数、設備、備考」などがあります。そして、間取り図面があります。
まずは、地域と間取りを見て家賃相場を調べます。
調べ方はインターネットか不動産業者に電話で聞くか、不動産業者に訪問するかになります。
その際の注意は1軒だけだと偏った情報になる可能性があるので、3軒以上の業者に聞くことです。多ければ多いほどいい。その際、近隣の競合物件も調査します。条件としてリフォームは済ませると伝えてください(古いままで貸し出しするのではないことを認識しもらう。良く知った業者だとどれくらいのクオリティーのリフォームをするのかを知ってもらっているので、詳細な家賃が出ます)。
プランナーの方なら相談員や再生士に問い合わせることもできます。
次に工事額の算出です。
これは現地に行ってみるしかありません。内覧させてもらって、その場で工事費を出します。算出に要する時間は10~15分くらいです。
時間が少ないと思われるでしょうが、これは買付のスピードを上げることと不動産業者に余計な時間を取らせないことからです。ベテランになると、自分であらかたの工事額を算出できるようになりますが、経験の少ない方、もしくは自信のない方は、再生士と一緒に調査に行ってもらうことをお勧めします。
物件を買ってから「ここも工事をしないといけない」「こんなところが壊れている」などのリスクを減らすことができます。
家賃と工事額が出ていれば、冒頭の計算式に当てはめれば買付額が出ます。
次に利回りの基準です。
これは地域によって多少違いがあります。
関西では、13~15%(10〜15坪)、関東・名古屋地域では、12~14%(15~25坪)が相場だと思ってください(現時点で)。
物件の違いでは、テラスや再建築不可(現在の建築基準法で建物を建て直せない物件。たとえば建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の(建築基準法上の)道路に間口が2m 以上接していなければ、その土地に建物は建てられない。)などは希望の利回りより1~2%高くします。これはリスクを収益で補うからです。
駅から遠い、急な坂道があるなど条件の悪いものも1~2%高くします。逆に駅のすぐ近く、都市中心部に近い、評価額が高いなど条件のいいものは1~2%低くします。また、借地の場合は17%以上、時折20%以上の利回りが出せる物件もあります。
利回りが高いということは、それだけリスクも高いということです。ですから、今示した以上の利回りを求めすぎると思わぬ落とし穴にはまる可能性が高くなります。
投資はバランスが大切です。
売主も不動産業者もすべてが納得いく利回りがこの辺りなのです。買い叩いて1人だけ得をしようとすると、そこには情報が集まりません。すると成長力が落ちてしまいます。それが長く大家業をして継続成長する秘訣です。
試算から即購入へ。1年半で7棟を所有するサラリーマン大家
前本さんは、大阪市内のサラリーマンで45歳の営業職です。株やFXをやっていたのですが、リスクが高いと考えて現物の不動産投資に変えようと勉強していました。
しかし、いきなり何千万円も投資する勇気も出ないし、どうも区分マンション投資のセミナーに行ってみてもピンとこなかったのです。
そこでHPで全古協を見つけ「これだ!」と思い、すぐに参加しました。
前本さんは、空き家・古家物件見学ツアー2回目の参加で買付を入れることになりました。もちろん初めて不動産投資をするので、手持ちの現金でなるべく価格を抑えたものが欲しいと考えていました。
そこで、物件見学ツアーで見た2軒目のテラスに注目しました。
「あのテラスどうでしょうか?」
「いいと思いますよ。駅からもそう遠くなく、裏が公園で明るいので、入居付けは難しくないと思います。試算はしましたか?」
「はい。家賃がテラスなので4万円、工事額は先ほど再生士の方に聞くと120万円と言っていましたので、年間家賃48万円、利回りを15%に設定してみました。計算すると320万円で、そこからリフォームの120万円を引くと200万円となります」
それを聞いて私は、販売価格は250万円でしたが、200万円で指値(不動産の買付金額。)をさせていただきました。結果は「220万円なら売却します」と売主さんから返事がきました。
それを言うと、前本さんは2つ返事で購入を決めました。ただし、私が買付を入れる前から前本さんに伝えていたことがあります。
「200万円で買付を入れますが、通らない場合にいくらなら売りたいとの返事がくる場合があります。その時のために、いくらまでなら購入するか考えておいてください」
「はい。わかりました。ただどれくらいが妥当なのでしょうか?」
「240万円なら14%の利回りになります。この物件は比較的条件がよく入居付けには困らないと思うので、そこまでならいいと思います」
「わかりました。そうします」
そんな会話をしていたので、売主から返事があった時にすぐに決めることができました。もし、そこで迷っていたらほかの方に話が流れたかもしれません。
常に早い判断をするには準備も大切です。
その後、リフォームをして募集1ヵ月後には入居者も決まり、それが前本さんには自信になったようです。彼はその後、1年半で7軒の物件を購入しています。
利回り20%以上を叩き出す、たまに出るお宝物件……大熊
不動産物件で言われる「お宝物件」とはどういうものでしょうか?
利回り?評価額の高いもの?家賃の高いもの?
その前に、自分にとってのお宝物件とは何かを考えてみましょう。
人それぞれにお宝の意味合いは違います。たとえば、初めて物件購入する方なら、オーナーチェンジ(賃貸住宅の所有者が入居者の入ったままの状態で、その住宅を売却すること。全古協ではプランナー同士のオーナーチェンジがあり、物件のクオリティーが統一されていることや入居者の情報などが開示されているので、安心して取引ができる。)ですぐに家賃が入るものであれば、少しばかり利回りが落ちてもすぐに家賃が入るので実績をつくるには最適です。
12月に購入したとしても、確定申告ができて晴れて大家業実績1期目になります。この確定申告は銀行に対しての信用として実績になるのでとても大切です。
同じ初心者の方でも勉強・経験をしたい方なら戸建てで便利な場所がいいでしょう。多少利回りが落ちても駅に近いほうがいいでしょう。経験もできて入居付けもそれほど難しくないからです。
また、同じ初心者でも、手持ちのお金がない方でもできるだけ安く購入できる、利回りの高い物件ということもあります。キャッシュフローを早く増やしたいという方にはお宝物件です。その場合は、テラスや小さな戸建てで、便利の悪いところや条件の悪いところがいいでしょう。なぜならば、利回りが高いのももちろんですが、条件の悪いものを再生した経験が自信につながり、これからの大家業の成長スピードがとても速くなるからです。
これは事実です。不動産の買える幅が広がるし、再生能力が高くなるので、利回りも良くなり売却する時も高く売れるようになるからです。
このように、お宝物件とは人それぞれ違うことがわかります。まずは、今の自分に何が必要なのか考えることが大切です。
とはいえ、お宝物件での必須条件として「スピード」があります。
ある時、物件見学ツアーをしている前日の夜に情報が入ったことがあります。当然、スケジュールは前日には決まっているので、この情報物件はツアーの最後に急きょ入れました。
その物件の前に着いた時には辺りは真っ暗。電気もきていなかったので、真っ暗な建物の中にスマホの明かりだけで入りました。
中は動産でいっぱい。真っ暗なので足元もおぼつかない状態です。
しかし、ここでも慣れた会員の方はドンドン率先して入っていきます。真っ暗だし動産で見にくく、現場調査するには最悪の状態です。
そのような条件で、すぐに200万円で買付を入れたのです。
その根拠はこうです。前道は狭いですが、駅から7分くらいの立地で3階建て築30年。家賃は5万5,000円なら固い。リフォーム額はその場で再生士が230万円と概算。すぐに利回りが15%を上回ることがわかりましたので、あとはスピードで勝負です。
昨日の夜に入ってきた物件情報なので、ほかの方がまだ見ていない。それなら買付が通る可能性が高くなります。結果的には翌日に買付が通りました。これで駅近くの高利回り物件が1日ででき上がったのです。
もう1つ、お宝物件の事例があります。
ある日、全古協になじみの不動産業者から電話がありました。
「全古協さんは借地(借地の不動産とは、別の人が土地を持っていて建物だけを買う物件のこと)も購入しますか?」
全古協の中には借地の事例もあり、会員の中には司法書士で借地を買っている方もいます。そこで私は答えました。
「はい。喜んで購入いたします」
それだけ伝えて現地調査を翌日に設定しました。すぐにメールでプランナーに案内を出し、同行する方を募集しました。平日でしかも前日での案内にもかかわらず3名の方が集まり、再生士と一緒に現場に行きました。
思っていたより家はしっかりしています。丁寧に使われている様子で内装もきれいな状態です。部屋数も多く差別化もあります。
といっても、築42年、それなりにリフォーム代はかかりそうです。場所も駅からは約15分。ですが、行政施設やスーパーなども近くにあり人気の地区です。貸し出すには問題のないところです。お宝物件になる匂いがします。
条件を付けて、すぐに買付希望しました。
結果、買付額は早期に決まり、売主さんにもとても喜ばれました。そして、スピード買付&スピード契約で、なんと25%の利回りを得られることになったのです。
最後にもう1つ、めずらしい事例です。
不動産業者からすぐに見てほしい物件がありますと、電話の口調から売り急いでいる案件だとわかりました。
翌日に再生士を連れて現場調査です。その物件は築45年で状態は悪く、前道が細く再建築不可の物件。なかなか売りにくいのはすぐにわかりました。
再生士が出した工事額は250万円。駅から近いけれどその周辺は古い家ばかりでごちゃごちゃしています。家賃を高くするのは厳しい。よって6万円の家賃相場で計算しました。
(6万円×12=72万円÷15%〈再建築付加なので高めに利回りを計算します〉=480万円)―250万円=230万円の買付額になりました。
しかし、この買付額では通りませんでした。350万円なら売ってもいいということでした。しかし、その金額で計算すると12%の利回りです。再建築不可の物件では利回りが少なすぎます。
しかし、場所は悪くても近くの駅は大阪環状線の駅でした。なかなか出てくる物件ではありません。
そこで考えたのは「民泊」です。再度検討すると簡易宿泊所の許可も得られる地域です。
家賃は、民泊業者に聞くと20万円の宿泊料は取れそうです。運営業者の手数料20%を引いても16万円になります。その代わり、旅館仕様にする必要があるため工事費が400万円になります。
(16万円×12=192万円)÷750万円=25%
リスクはありますが悪くはありません。ここはチャレンジです。
結果的には、ほぼ予想通りの収支となり、2年後に1,200万円で売却できたのです。
家賃設定が自分で算出できない人は失格!……三木
家賃設定は、空き家・古家再生投資のキモになる重大ポイントの1つです。
不動産投資なのですから、家賃収入がどれだけあるのかを最初に見極めないと一歩も進めません。
投資なのにリターン(家賃収入)を見極められないなんて問題外です。しかし、ここで失敗している不動産投資家がたくさんいます。
空き家・古家再生投資ではあまりないですが、普通のアパート・マンション投資の場合、満室入居で購入して、退去があっても次も同じ家賃で入ると思っている投資家が結構います。
しかし、私は業界の裏事情がわかっていますので、もっと冷静に見たほうがいいということを先にお伝えしておきます。
一般に不動産投資家向け物件の場合、家賃が高ければ高く売れるわけですから、売主側はより高い家賃で売りに出したいわけです。
そこで賃貸の客付け業者(入居付けを行ってくれる不動産業者。)に普段はあり得ないような高いリベートを払って(私の知っている売主で家賃の6ヵ月分を広告料として支払う条件がありました。一般的な仲介の場合1~2ヵ月の広告料というのが多い中、破格リベートです)、家賃も相場より2割は高かったのですが、すぐに満室になり売却しました。
しかし、売主は相当に無理して満室にしています。この満室物件を次に買った方は、一般的な広告料2ヵ月分、2割高くなっている家賃を設定しますが、入居者は付きません。逆に部屋は空いていくばかりです。
それでも買った人はこのことに気づいていないのです。業者にお任せで家賃相場さえ調べることをしなかったからです。
家賃相場などは、今ではインターネットのサイトで簡単に調べられます。
たとえば、HOME’S「見える!賃貸経営」を使えば、あなたが購入したい物件周辺の家賃相場はもちろん、どれくらい人気エリアなのか、どの間取りが人気で空室率がどれくらいなのかなど簡単に調べることができるのです。
しかし、こんな初歩的なことさえ怠っている人がたくさんがいます。
2016年頃から、高額所得者、たとえば医者や外資系企業の社員の自己破産が急増しています。彼らは所得は高いので多額の融資で大きな物件を買ったのです。
このような方は本業も忙しく、物件を買うにもほとんど業者任せというあり様で、自分の物件の状況を十分に把握していませんでした。ですから、無理な家賃設定は短期間でたくさんの退去者を出してしまいます。
実際に入居者に退去されると、次の入居者がなかなか決まらないということで、空いた家賃の分の返済を自分の収入から補填するしかありません。ですが物件が大きいため、その補填額も膨大になり、ついに補いきれず破綻してしまうのです。
自分の物件の家賃相場もわからない人は、投資家として最初から失格です。
ビジネスマンとして優秀だから、投資家として優秀であるかは別の問題です。
だからこそ物件見学ツアーでは、見学後にそれぞれの物件の適正家賃の検討会をします。これが本来の考え方だと思うのですが、最近は現状家賃だけ見て自分で調べない人が多すぎると思います。
何度かツアーを経験すると自然とそのエリアの適正家賃がわかってきます。どんな物件でもサイトだけだと立地条件や周辺環境、物件の良し悪しを見抜けません。しかし、現地でしっかり見てくるとどんどん目利きになっていくわけです。
以前本を出版した際、あまり具体的なノウハウが書かれていないという感想をいただいたことがありますが、経験もせずに本だけの知識で成功しようと思うほうが相当危険だと思います。
私は多くの不動産投資家の成功者を輩出してきましたのでわかりますが、変に知識があることで踏み出せなくなったり、思い違いして失敗した人を見てきたからこそ、多少厳しいことを述べているのです。
いくらたくさん知識とノウハウを書いても、それは著書の自己満足にすぎません。それは同時に、読者の皆さんの成功にはつながらないのです。
本当の成功ノウハウは現場にあるのです。
三木章裕(みき・あきひろ)
収益不動産経営コンサルタント、一般社団法人全国古家再生推進協議会顧問なども務める。NHK 連続テレビ小説「あさが来た」でも注目され、500年の歴史の中で磨き上げられた精神といにしえの蓄財術を引き継ぐ。近年では高利回り物件として提供する不動産投資を推進している。
大熊重之(おおくま・しげゆき)
(一社)全国古家再生推進協議会理事長、(一財)日本不動産コミュニティー講師、(株)オークマ工塗代表取締役、オークマグループCEO。現在、350棟以上の古家再生の実績を持ち、中小企業経営者、サラリーマン、主婦まで多くの大家を生み出している。
Source: 株式投資