スタートアップ必読!ICOの現状とベンチャーキャピタルから資金調達するメリット・デメリット
スタートアップ必読!ICOの現状とベンチャーキャピタルから資金調達するメリット・デメリット
スタートアップの資金調達手段として、大きな注目を集めているICO。多額の資金を短期間で集めることができるというメリットもあり、2017年はICOを用いた資金調達金額が大幅に伸びた。しかしその一方で詐欺とみられる事例もあることから、ICOに対して規制を設ける動きも出ており、日本でもICOに一定の制限が設けられる可能性がある。
ここからは、ICOの現状を確認するとともにスタートアップの資金調達先として従来より一般的とみなされている、ベンチャーキャピタル(以下、VC)から資金調達を受けるメリット・デメリットを考えてみたい。ICOにはないVCの特性を押さえると、スタートアップはより最適な資本政策を構築することができるのではないだろうか。
急成長を遂げたICO、一方で課題も浮き彫りに
ICOによる資金調達は、2016年から2017年にかけて40倍以上にふくれ上がったといわれている。
2017年、海外においては、次世代ブロックチェーンとして注目を集めている「Tezos」、スマートトークンの実現を目指す「Bancor」が多額の資金調達に成功した。
また、日本でもテックビューロの「COMSA」が、ICOにより日本円で100億円以上の資金調達に成功した。このようにインターネットと仮想通貨を用いて、世界中からあっという間に資金を集めることができるのが、ICOが急速に普及した要因の一つと考えられる。
一方で、2017年はICOの課題を浮き彫りにした年でもあった。プレセールの段階で大きな期待を受けた「ChronoBank」や「Storj」といったICOは、当初の想定を大きく下回る利回りになっている。また、多額の資金調達を行ったTezosにおいては、トークンの配布が遅れ、投資家が集団訴訟を起こすという事案が発生している。
さらに、詐欺行為などが横行しているのも深刻な問題だ。偽のウォレットを用意して、資金をそのまま持ち逃げするなどの事件が発生した。こうした事態に世界各国でICOに対する規制が強まりつつある。
ICOに対する規制を設ける動きも
ICOに対して比較的早い段階で規制を設けたのは中国だ。中国では詐欺の横行などを理由にICOを全面的に禁止するという厳しい対応を行った。また、同じアジアでは、韓国もICOをすでに全面的に禁止しているほか、2018年にはフィリピンも規制に踏みきる可能性があるという。
欧米でもICOに対する懸念は広がっている。たとえば、英国では2018年1月、ICOに対して厳しい姿勢を取る方針を発表している。英国の金融規制監督官庁である「金融行為監督機構(FCA)」は、ICOについて「極めて高リスクの投機的な投資だ」と警告をした。また、米国ではSEC(証券取引委員会)が、ICOによって発行されるトークンが投資家に対して利益をもたらすため有価証券の一種である「投資契約」とみなし、監視を強化している。
スタートアップの資金調達手段として今後、有力な選択肢になるのではないかと考えられていたICO。だが、課題が浮き彫りになったことによる各国の厳しい対応を見る限り、今後これまでと同様にICOを実施するのは難しくなるかもしれない。
改めて考えてみたいVCのメリット
スタートアップの資金調達において、その位置付けが見直されているのがVCの存在だ。VCはスタートアップの資金調達先として重要な役割を担ってきたが、ICOが大きく伸びる中でその存在価値を問う声も上がっていた。
ICOに多くの課題が表面化する中、改めてVCの存在価値が見直されている。特に、次にあげる3つのメリットは、現在のICOにはない価値だ。
VCが持つネットワークが得られる
スタートアップがVCのポートフォリオ企業となれば、VCがこれまで構築してきたネットワークから顧客候補や協業できる企業などを紹介してもらえるだろう。これにより、スタートアップの事業環境が整備され、事業が加速する可能性がある。VCが持つスタートアップの育成ノウハウが得られる
数々のスタートアップにかかわり、その成功に貢献してきたVCが持つ知見は、スタートアップの成長に大きく寄与する可能性が高い。このようなVCから投資を受けることは、単純に投資を受ける以上の価値があるだろう。VCから出資を受けたという社会的信用が得られる
出資により社会的な信用を高めることができれば得られるメリットは大きい。特に、一流のVCの厳しい目をクリアしてきたとなれば、金融機関や取引先の評価も変わることだろう。
スタートアップの資金調達は、ICOとVCどちらが良いのか
もちろん、VCからの資金調達にもデメリットはある。投資金額によっては、アーリーステージから投資比率が大きくなりすぎたり、適切なアドバイスを受けられない可能性もある。それだけにVCを選ぶ際は、VCが手掛けてきたポートフォリオなど実績をしっかりと調査して選ぶ必要があるだろう。
ここまでICOとVCのメリット・デメリットを考えてみたが、どちらか一方だけが良いということはない。大事なことは、流行に安易に流されず、自社に合った資金調達手法のメリット・デメリットをしっかり押さえることではないだろうか。それを踏まえて資本政策を考えて実行することが、スタートアップがファイナンスの観点から会社を軌道に乗せるうえで重要なポイントとなるだろう。(提供:MUFG Innovation Hub)
執筆者:山田雄一朗
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